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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年1月8日付け

 首相の「お伊勢参り」は今や年頭行事になっており、ここでの発言は政治的にはかなり重い。戦前の総理大臣は新年もだし、就任直後にも参拝していたけれども、戦後になると東久邇稔彦首相を最期にGHQ指令で途絶え吉田茂や幣原喜重郎、片山哲、芦田均の4首相は「空白の10年」とされる。昭和30年(1955年)の1月5日に鳩山一郎首相が参拝してからほぼ恒例の行事になり今に到る▼福田康夫首相も4日に伊勢神宮に参拝し記者会見を行ったが、どうも元気がない。ひとつには「ねじれ国会」のため参議院の動きに政治が左右されるの問題がある。一番の気掛かりは、インド洋での給油活動を継続する「対テロ法案」の国会可決だが、民主党が多数の参院では「否決」の見通しが強い。そうなれば、政府は衆院で再可決し法案は成立するけれども、これによって生ずる政治的なギクシャクと与野党対立は避けられない▼防衛省の裏金もあるし、守屋前事務次官の収賄事件や年金問題と福田政権には、厳しすぎる難問が山積している。ならば―解散し国民に信を問うの決断もあろうが、洞爺湖サミットが控えており、そう簡単に総選挙に踏み切るのは難しい。一方の民主党は、何が何でも解散をと勇ましい。参院での首相問責決議案の可決も本気だし、政治的な危機は迫っている▼小沢一郎代表も伊勢参りしたが、こちらは壮気に満ちている。昨年の参院選に続き衆院選でも大勝をと目論む。圧勝し「政権奪取を」が狙いながら―目下の政治状況からすれば、この民主党が描く絵図も決して夢幻とは言えまい。と、これからの政治の動きは激しく厳しい。(遯)

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