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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年1月12日付け

 ピカソの絵画盗難は、大トピックだったし、国際電で世界の国々に伝わった。評価額が62億円とされる作品なので話題にもなる。ブラジルでは「スザンネ・ブロッヒ」だが、日本では「女性オペラ歌手の肖像」でフアンは多い。しかも―サンパウロ美術館に侵入した2人組によって盗まれたとなれば、世の騒ぎは広がり輪を描く▲サンパウロの力は大きいが、美術的にもビエンナ―レとサンパウロ美術館で国際的に知られる。新聞王・アシス・シャトブリアンが「ヨーロッパに負けない美術館」をと収集した西洋美術品を誇るもので欧米の人々は「奇跡の美術館」と呼ぶ。ゴッホ、ゴーギャン、ロートレック、モネやマチス、ピカソなどを1000点超も買い集め収蔵し日本でも展覧会が開かれ人気だった▲日本人移民は、農業での功績は自慢していいけれども、大雑把な言い方をすれば、美術には弱い。少なくとも、あまり強くはない。そんなわけでパウリスタ大通りのトリアノン公園の向かい側にある巨大な赤い4本柱の建物が「サンパウロ美術館」であり、機会があれば訪れて中世から近世に至る各時代の美術品を鑑賞してほしい▲ビエンナ―レも有名で版画家・棟方志功が55年に最高賞に輝き文化勲章受賞に繋がる。と、サンパウロは美術都市であることにもっと目を向けたい。美術館には盗難にあったブラジルの奇才ポルチナリの絵画もある。この大泥棒2人組も御用となったが、どうやらヨーロパの闇市場を狙った組織が裏影に潜んでいるらしい。成功報酬は500万レアルだそうだから―ピカソに相応しい相場なのかも知れないが―。  (豚)

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