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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年1月17日付け

 日系社会の裾野は広い。ここ数年で何度も日系福祉団体のイベントに手弁当で参加してくれているMPB歌手のジャイール・ロドリゲス、その奥さんが日系三世なのは本紙でも何度も伝えている。その娘で、最近CMにもよく出演して人気上昇中の若手歌手のルシアナ・メーロは正しく日系四世だ▼さらにマウリシオ・デ・ソウザを知っているだろうか。「トゥルマ・ダ・モニカ」などで有名なブラジル人マンガ家だ。彼が、百周年のマスコットを本日十七日にブラジリアの開始セレモニーで発表するという。ソウザの奥さんはやはり日系二世で、三人いる息子は日系三世だ▼十五日の日本政府開幕式典に出席していたので尋ねてみると、「最初は伝統的な和服を着せたキャラクターを考えたけど、日系社会はもっと若々しくてモダンなイメージが強いと思って、ダイナミックで新しい感じの絵にしたよ」と語っていた▼ブラジルマンガ界においては日本の手塚治虫なみの存在であるマウリシオが描くことで、一般ブラジル人たちが移民百周年をさらに認知することは間違いない▼日系人がブラジル社会に拡散して純血が少なくなっていると嘆く声をよく聞くが、その反面で日系人の親戚がいる人が増えており、その結果、有名人ですらどこかで日系と血縁を持っている時代になってきた▼百周年という年だからこそ日本文化継承への気持ちを強く持つ必要もあるが、このような「統合」を喜ぶ気持ちも持ちたい。マウリシオの絵は、日本移民をイメージの源泉としたブラジル文化そのものだ。そうして、日本移民史はブラジル近代史の一部になっていく。(深)

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