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州裁判所が釈放を判断=焼津母子3人殺害容疑のネベス被告=非拘束のまま公判を継続=実兄「この決定は当然」

ニッケイ新聞 2008年7月4日付け

 〇六年十二月に静岡県焼津市で起きたブラジル人母子三人殺害事件で、日本政府から国外犯処罰(代理処罰)要請に基づき、殺人罪に問われて公判中のブラジル人、エジルソン・ドニゼッチ・ネベス被告が二日夜までに、釈放されたことが三日、わかった。専門家によれば、裁判自体は継続されるが、今回の裁判所の判断をうけ、身柄は当面、非拘束となるという。
 ネベス被告の双子の兄で、同公判担当弁護士のエルソン・ロッシャ・ネベス氏が三日午前、ニッケイ新聞の電話取材に応じ、明らかにした。
 エルソン氏は「被告の拘束を不当とする高等裁判所の決定は当然のこと。まだ何も判決が下されていない段階で、彼が拘束される理由も責任もない」と断言。
 被告の所在を明らかにしなかったが「彼は元気にしている」という。今後の裁判の見通しについては「まったくわからない。ただ新しい展開を迎えたのは事実だ」とだけ述べた。
 釈放にいたった具体的な理由は不明。州高等裁判所広報も、担当検察官も、三日午後四時現在で取材に応じていない。
 ただ、日本メディアの報道によれば、被告の拘束は違法とする弁護側の申し立てが、州高等裁判所で認められたとみられる。
 国外犯処罰問題に詳しい渡部和夫元サンパウロ州高裁判事によれば、「釈放されても、非拘束のまま公判自体は継続できる。再度の身柄拘束と逮捕は、裁判所の判断にゆだねられる」という。
 ネベス被告は〇六年十二月、当時交際していたブラジル国籍の女性派遣社員、ソニア・アパレシーダ・ミサキ・フェレイラ・サンパイオさん=当時41歳=宅で、ミサキさんとその次男を殺害、さらに自宅で長男を殺害した疑い。
 同被告は焼津市内で貸金業などに関わっていたとされ、事件発覚直前にブラジルに帰国。サンパウロ州サルタイア市内に購入した農場で暮らしていたが、日本政府からの三件目の国外犯処罰が〇七年九月に、ブラジル政府に申請され、今年一月十五日に逮捕されていた。
 初公判が二月二十一日、サンパウロ市内裁判所でおこなわれたが、黙秘を貫き、わずか二十分で閉廷した。その後、日本に嘱託尋問の書類要請を送付し、それがブラジルに戻り次第、弁護側証人喚問、判決となる見通しとみられている。

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