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世界が注目した百周年=英、仏、西語でも報道=「異文化統合の新モデル」

ニッケイ新聞 2008年7月24日付け

 百周年を機に、多くのブラジルメディアが日本移民百周年関連の報道合戦を繰り広げたが、目を国外に向けると、世界中のメディアもまた異例ともいえる百周年の取り上げ方をしていた。ロイターなどの通信社は多言語で配信し、英BBC、中東アル・ジャジーラ、仏リベラシオン紙、スペインのエル・パイース紙などは独自の取材を試みていた。世界が見た百周年の一端をのぞいてみた。
 ビン・ラーディンの独占映像などを流すことで有名な中東アル・ジャジーラ局も六月二十二日、「日本人がどのようにブラジルの多文化社会形成に貢献したか」という視点で二分半のニュースを報じた。
 「百年が経過したが、日系人はブラジル社会に統合されながらも、独自の伝統を維持している」とアル・ジャジーラは伝え、日系レストラン店主にインタビューして日本食ブームの状況を報道している。
 英BBCは移民の日前日の十七日、「日系ブラジル人の遺産を残す」という題で、二分四十七秒報じている。上原幸啓文協会長に取材し、九歳で渡伯して素足で学校に通っていた、といつもの逸話を紹介。
 歴史家のアルリンダ・ロッシャ・ノゲイラ女史は「一〇〇%統合された訳ではない」とし、「三世や四世の世代は統合へ進むが、一世や二世世代はそうではなく、まだ閉鎖的なコミュニティの部分も残っている」との説を披露。最後の「一世は重労働に耐え、二世らは予想を超える成果を残した。達成されたこれだけでも、百周年で祝うに値することだ」と締めた。
 アジアではマレーシアの英語サイト(星洲互動)はアジアニュースからの配信として、「ブラジルの中の大きな存在」との記事を掲載した。
 その中で、ブラジルのエスニックを研究する米国コーネル大学のジェフリー・レッサー教授は「ブラジルの日系人にはわずかな大臣と立法者しかしないが、米国はもっと少ない」とし、さらに「興味深いことにブラジルの日系政治家の多くは沖縄系だ」という。
 「日系人たちの多くは、閉鎖的で冷たいと思われている共同体のイメージを親しみやすく和らげたり、ブラジルらしさを持ち込み、日本文化を変化させることで日系社会を存続できると考えている」との独自の分析を述べてる。
 スペイン語ニュースを「日本移民」「百周年」というキーワードで検索したところ、六月だけで百二十件以上あり、ポ語以外の外国語では最多だった。皇太子殿下のご来伯に関する速報が多いが、中にはロイターが移民史年表、EFE通信がラジオ体操についての記事も配信した。
 ラジオ・フランス・インターナショナルは三月十三日付けで、「リベラシオン紙は、ブラジルの日本移民が異文化社会統合の新しいモデルを示した」との観点から百周年関連に二ページもさいたと報じた。戦争中に枢軸国移民として迫害された日本人は、それを乗り越えて社会統合を果たし、海外最大の日系社会を作り上げた歴史を伝えた。
 いずれも現代のグローバルな視点から日本移民百周年を読み解いているのが特徴だ。移民の大量流入による異文化衝突を回避しながらどう社会統合するか、西洋と東洋に文化の衝突と融合という文脈から、百周年を解釈している。
 外国からの視線は、現在行われている日本的な特性を残しながらブラジル社会に統合する試みに、世界的な価値があることを示唆している。

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