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在外被爆者訴訟=「来日要件」乱用は違法=広島地裁が賠償命じる

ニッケイ新聞 2008年8月2日付け

 【共同】被爆者本人が来日しないことを理由に、広島県が被爆者健康手帳の交付申請を却下したのは違法として、ブラジル在住被爆者男女の遺族が処分取り消しや計三百三十万円の国家賠償などを求めた訴訟の判決で、広島地裁(能勢顕男裁判長)は七月三十一日、手帳申請の却下処分を取り消し、国に計百六十五万円の賠償を命じた。
 能勢裁判長は判決理由で「国内に居住しないことのみを理由として申請を却下した処分は、裁量権の乱用で違法」と指摘。「被爆者は国の通達で法の保護の外に置かれた」と述べ、国は精神的損害の賠償義務を負うとした。
 手帳交付申請の際、在外被爆者に来日するよう定めた「来日要件」の合理性が焦点。六月成立の改正被爆者援護法では、この要件は撤廃された。
 判決は「来日要件」について「一定の合理性があるが、一切の例外もなく求めるのはあまりにも形式的だ」とした。
 訴状によると、男性は長崎、女性は広島で被爆後ブラジルへ移住。二〇〇六年三月、弁護士を通じ交付申請をしたが、広島県は却下した。男性は提訴直前の〇六年、女性も翌〇七年に死亡した。

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