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サトウキビからディーゼル油=新しい選択肢登場=酵母が生み出す可能性=注目のクリーンエネルギー

ニッケイ新聞 2008年10月16日付け

 ヴォトランチンとウジナ・サンタエリーザは十四日、米Amyris社の技術によって、サトウキビからのディーゼル油の生産を二〇一〇年に開始すると発表したことを十五日付けエスタード紙が報じた。遺伝子組み替え酵母を使った発酵プロセスで、サトウキビから生成したディーゼル油の成分を遠心分離する。ブラジルのディーゼル油年間消費量は、四百五十億リットル。うち五十億リットルは輸入している。
 サトウキビの絞り汁を発酵させるのは、従来の工程と同じだが、発酵に使う酵母の幹細胞に、異なる働きをする遺伝子を組み入れる。遺伝子組み替え酵母は、大気汚染の原因となる硫黄などの成分以外、ディーゼル油の必須成分と水分を生成する。
 サンパウロ州セルトンジニョに建設された精製所は二〇一〇年、年産四億リットルで生産開始。二〇一二年は十億リットルの生産予定。
 製造工程はエタノールと殆ど同じ。転業も可能。燃焼する時には炭酸ガスは発生するが、植物性燃料なのでCO2は光合成の段階で消却された計算になる。エタノールと同様、石油から作ったディーゼル油と比べれば持続可能な燃料として将来性が見込まれる。
 サトウキビは糖分を生成するが、油脂分を生成しない。酵母が油脂分を生み出す。「だから製造プロセスは従来のバイオディーゼルと異なる」と専門家は説明する。
 酵母には、十五種類の遺伝子が組み込まれる。酵母の発酵までの工程はエタノールと同じだが、使う酵母は企業秘密だ。ブラジルが輸入する五十億リットルを代替するまでは少し時間がかかる。
 研究室段階の実験は成功したが、大量生産での実験はこれから。理論的には米国で証明済みだが、市販に際しての最終段階はブラジルで実地検証が必要だ。
 サトウキビ・ディーゼル油の製造原価はバレル当たり六十ドル。石油のディーゼルと競争できる価格。エタノールの生産設備があれば、酵母を取り替えるだけでよい。これからは、エタノールとディーゼル、砂糖価格を比較しながら選択するようになる。
 酵母の研究が発達すれば、選択肢は無限に広がる。バイオマスの研究は、世界中で取り組まれている。酵母次第で、必要な成分を何でも生成してくれるからだ。

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