ニッケイ新聞 2008年10月21日付け
金融危機から派生した営農資金の調達難のため、配給公社(Conab)が予測していた〇九年度収穫高一億四四五五万トン(米、フェイジョン、大豆、とうもろこしなど)に悪影響がでてくることが確実になったと二十日付けエスタード紙が報じた。三年連続増産が続いたブラジルの農業生産は、ちょうど作付け期に肥料と農薬の農業融資で支障を来たし、ここにも国際金融危機が波及したらしい。
肥料や農薬などの主要農業資材の購入に要する営農融資は過去数週間、制限されたとブラジル農畜産連盟(CNA)が発表した。今年は最高の出来高一億四三八〇万トンと予想されているが、資金調達難が続けば、今年より四・五%減産となるという。営農資金が三十日以内に融資されないなら、折角の降雨期を迎えても植付けが不可能となる。
政府は数々の金融危機対策を講じたが、農業前線に未だ資金が届いていない。政府の対策は、手遅れであった。農業資材は、必要な時期に必要なものが投下されないなら、チャンスを逸する。失った時間は、取り返しのつかないもの。
十三日の政府発表は、農業融資に五十五億レアルを充当するはずであった。この金が雨季に入る前に生産者の手に届いていれば、種まきは間に合うはずであった。
政府は緊急対策資金を大手銀行に渡し、銀行は自分の懐肥やしに専念している。ブラジルのお役所仕事とは、こういうものと農業者団体が一斉に抗議している。
農業生産者にとって不運であったのは、農業融資の決済期と金融危機が同時に起きたことだ。前年度融資が未決済の生産者には、新規融資が差し止められた。
例年農業融資を行う銀行以外の穀物商社や肥料メーカー、農薬メーカーも同様に融資を渋った。例年は、これら銀行以外から七〇%の融資を得た。今年はそれが、二四%に留まった。
農業融資の資金不足は、クレジット不足だけではなさそうだ。コモディティの下落と肥料や農薬のドル高騰による原料高騰が原因している。
穀物の生産原価は現在、ヘクタール当たり八百ドル。シカゴ穀物取引所の相場は現在、ブッシェル(ヤード・ポンド法における容積の単位)当たり十四ドル、ヘクタール当たり七百ドルになる。これでは、生産者の赤字が明白。