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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2008年12月17日付け

 日本で「デカセギのサブプライム問題」が発生するかも知れない。米サブプライム問題は低所得者層向けの住宅ローンに端を発していたが、契約者には新来移民が多かったという▼三十年などの長期ローンで自宅を購入したデカセギが債務を払えなくなるのが、それだ。不況で解雇されて支払いできなければ自宅を売るか、自己破産をするか▼多くのデカセギは「家賃を払うより住宅ローンの方が安いし、払い捨てにならない」という理由で契約していた。ところが〃雇用の調節弁〃たるデカセギの本質は「安定した雇用がない」ことだ。好景気だったから今まで長期ローンが組めたが、本来はそれに適した雇用状況ではない。ここに不良債権が生じる余地がある▼自宅を売ろうにも不況で買い手が無く、かといって自己破産手続きも面倒、なら「ブラジルに逃げろ」となることが恐ろしい。住宅ローン会社や銀行が何の担保を設定しているか分からないが、もし近所の日本人が保証人になっていれば目もあてられない。この「借金踏み倒し帰伯」が起きたとは、まだ聞かないが、いずれ可能性はある▼これはれっきとした犯罪であり、日本社会からの評判を落とす。万が一、そのような踏み倒し帰伯者が出てきたら、日系社会でも厳しく対処するべきだ。「ジャポネース・ガランチード」を汚す行為を放っておいてはいけない▼逆に、この危機を乗り越えて日本に残る日系人の中心は、十円の時給に惑わされて仕事を次々に変えてきた層ではない。不況を見越して、直接雇用で時給よりも安定した仕事を優先してきた層だ。これを機に永住への歩みをさらに進めるだろう。 (深)

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