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コラム オーリャ!

ニッケイ新聞 2009年2月3日付け

 小さい頃、祖母が作る自家製みそが好きだった。味は市販品の方が改良され旨味に富んでいるが、子供ながらも、これが家族の幸せの象徴のように思っていた。
 それがある日、市販のものへと変わってしまった。理由は祖母が体力的に限界を感じたため。家族の危機を感じた私は、祖母の家に泊まりこんでみそ作りを手伝った。大豆を洗ったり、大きな鍋の中に入れたりするのは、体の小さな祖母には重労働である。
 そんな幼い頃の日本の記憶がよみがえったのも、ブラジルで、義母が作る自家製のたくあんや納豆を見てのことであった。できた物を友人たちと交換するなど、実にほほえましい。
 郷に入れば郷に従え、所変われば、焼そばも変わる―ではないが、私の世代で止めてはならないものがあることをまたひとつ自覚した瞬間だった。      (綾)

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