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■記者の眼■ 県人会の目的とは何か=会館の賃貸か内部活動か

ニッケイ新聞 2009年3月4日付け

 静岡県人会に起きたことは、他のどの会にあってもおかしくない。皆で真剣に考える必要がないだろうか。
 どこでも会館をほかの団体に賃貸しし、それを県人会書道部、ダンス部、カラオケ部、太鼓部などと称して、総会で事業報告し、県庁にも県人会の活動として上げている。大半の県人会で見られる行為だ。
 静岡で問題視されたカラオケ部は、立地の良さもあってかなり活発に活動しており、それにともない、お金も動いていると見られる。「県人会名を冠しているにも関わらず会計報告が行われていない」ことがやり玉に挙げられた。
 後藤宗治顧問は、「カラオケ部とはいうが、実際に県人会が運営している訳じゃないし、参加者のほとんどは県人と関係がない。正確には場所を貸しているだけ。いわば県人会に協力してもらっている形だけに、会計報告してくれとは言いづらい」と心情を吐露する。
 つまり会にとって「カラオケ部」は傘下組織ではなく、場所を借りてくれる「お客さん」なので、会計報告して「財布の中身を見せてくれ」とは言いづらい。杉本会長も、カラオケ部の会計報告を求めるとは言わない。そこから謝礼を受け取っている教師がおり、その金額を一般に知られたくないから反対しているようだ。
 鈴木幸男渉外理事も「どこにも毎月会計報告するようなきっちりしたカラオケ部はない。あくまでも参加者の楽しみでやっている。公表すべきといわれても煙たがられるだけ」という。県人会は公の活動だが、カラオケの場合は謝礼があるだけに、微妙に「商売」のニュアンスがあり、そこが今回問題にされた。
 川崎氏から問題にされたカラオケ代表の石切山加代子副会長に聞くと、「お金は全て県人会に渡っている」というが、会計報告をしない理由は明らかにしない。カラオケ教師の本田容子理事も「あの人たちはカラオケを問題にして、私たち二世を追い出そうとしている」と被害妄想を抱く。
 カラオケ部といえど、県人会の名を冠するからには公明正大に会計報告し謝礼も公開して、みなが納得ずくで楽しむことはできないだろうか。金銭的な部分に邪推の余地があれば、再び問題にされることは間違いない。
 本来、賃貸してくれる外部団体とは、「持ちつ持たれつ」の共生関係が理想だろう。頼りすぎると〃癒着〃と呼ばれ、バランスを欠く。
 ところが、立地の良い会館を持つところほど、経営を賃貸に依存する傾向が強くなる。それに伴って、内部で行われるべき「県人会活動」を外部が肩代わりしてやっている体裁ができてしまい、県人会内部で活発化させるべき青年部や婦人会の活動が徐々に衰えていく傾向すらみられる。
 事実、静岡にも久しく青年部活動はない。
 「県人会の目的はなにか」という原点に立ち返った時、賃貸が活動の主軸なのか。賃貸はあくまで収入を得るための手段であって、目的ではない。賃貸で経営を安定させ、その資金を持って、青年の育成、会員同士の親睦、母県の伝統・文化の普及を図ることにこそ、軸足を置かなければいけない。
 県人会活動の原点を見つめなおす、良い機会だ。 (深)

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