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ピースボート=「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」=被爆者協会の森田、渡辺さんが参加=世界20カ国を訪問=「語り継ぐ重要さ実感」

ニッケイ新聞 2009年3月13日付け

 被爆証言を世界に語る――。ブラジル被爆者平和協会の森田隆さん(85)と渡辺淳子さん(66)がピースボート創立二十五周年企画『ヒバクシャ世界一周の旅 証言の航海』で世界二十カ国を訪問、自らの被爆体験を語ることで平和の尊さを訴えた。二人は十一日に来社、四カ月間にわたる船旅の報告を行った。
 ピースボートとは、一九八三年に創立された船旅を通し、世界各地の人々と交流することを目的とするNGO団体。現在までに世界一周を含む六十五回のクルーズを行っている。百三人の被爆者を招待、世界で被爆証言を語る今回の企画は、訪問各地のメディアや関係者の関心を呼んだ。
 森田さんは途中下船し、米国ニューヨークの国連本部であった国連総会や国際シンポジウムで発言したことを印象深い出来事の一つに挙げる。
 高校生らにも自らの体験を語った。「原爆を落としたアメリカの高校性に話す機会はあまりない。真剣に聞いてくれ、平和の尊さを理解してくれたのでは」と手応えを話す。
 渡辺さんはベネズエラ、エクアドルを訪れ、多くの関係機関で証言した。各地でメディアの取材が多くあり、「関心の高さを感じた」。
 「しかし、原爆自体を知らない人もおり、世界では被爆の実態を知らない人が多くいた」とも。 核保有国のインドでは証言を聞く会で参加者から、「六十四年も経っており、昔話をしてもしょうがない」との発言もあったが、森田さんは広島や長崎で今も原爆症に悩まされる被爆者がいることを伝え、「理解を得ることができた」と話す。
 「被爆の歴史を伝えていくことがヒバクシャの仕事であることを今回の旅で実感した。ブラジルでも学校の平和学習で証言を伝えていくことができたら」と二人は声をそろえ、決意を新たにしていた。
 同企画は世界中から大きな反響があり、今年七月には小規模ながらも第二回を実施することが決定されたという。ドキュメンタリー映画も製作中で全国百カ所で公開される予定。

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