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再入国制限を『原則3年』に=日系人帰国支援問題に幕=河村官房長官が期限を明示

ニッケイ新聞 2009年5月12日付け

 【既報関連】再入国制限の期間が明示されていないとして日伯両国、米国などで批判の声が上がっていた日本政府の日系人帰国支援問題に関し、十一日、河村建夫官房長官が制限期間を「原則三年」(二〇一二年三月)とする考えを示した。同日の衆議院予算委員会で中川正春議員(民主党)の質問に答え、官房長官は「誤ったメッセージになったということは日本としても非常に残念」と述べた。制度発表以来、論議を呼んだ再入国制限問題。今回の期限明示により落着きを取り戻しそうだ。

 同事業は日本での再就職を断念して母国へ帰国する日系人に対し、本人に三十万円、扶養家族にそれぞれ二十万円を帰国支援費用として支給するもの。
 同制度で帰国した人は日系人の在留資格での再入国が制限されるが、期間が「時限的」とあるのみで明示されていないことから、本紙では政府の発表以前からその問題点を指摘してきた。
 四月一日の同事業発表後は、本紙に加えブラジルの各メディアが一斉に報道。米国NYタイムス紙も批判的に報じ、日本の大手マスコミも軒並みこの問題を取り上げはじめた。先月二十七日にはルッピブラジル労働大臣が同政策の無効化を求める公文書を駐伯大使館に送付するなど、異例の展開を見せていた。
 予算委での質問で中川議員は、自身の地元三重県鈴鹿市での外国人労働者の現状について「失業率は五〇%を超えるのではないか」と報告。
 日本政府による再就職支援など多くの対策に加え、帰国支援にも評価を示しながらも、制限期間を明示しない現行制度では「必要な時だけ呼んで、経済状態が悪くなると追いだされる」などと国外メディアの批判があることに触れ、「『当分の間』という表現でなく、期限を明示することで彼ら(日系人)も子供の教育を含め生活設計が立つ」と河村官房長官に求めた。
 河村官房長官は期間を「当分の間」とした理由として今後の経済情勢が不透明なことを挙げながらも、明示しなかったことで「誤ったメッセージになったということは日本としても非常に残念。あってはならないこと。特に日系人の皆さんからブーイングが出ていると話を聞いた」と発言。麻生太郎首相からも指示を受け期間の明示を決めた経緯を説明し、「事業開始から原則三年をめどにする」と答えた。
 三年という期間についてはスペインの施策を参考にしたという。舛添要一厚生労働相はさらに、三年以内の場合でも、経済情勢が改善されれば解禁を検討することもありうるとの考えを示した。
 中川議員からは、「家族・親戚の問題など他の目的で日本へ行く必要が生じた場合はどうなるのか」との質問もあったが、これに対して森英介法務大臣は、「個別の事情に応じて再入国の審査が行なわれると思う」との見方を示した。

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