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デカセギ危機=すでに5万人以上帰伯か=法務省統計=昨年12月から激増=際立つ定住者の離日=訪日も依然つづく

ニッケイ新聞 2009年6月11日付け

 昨年九月の世界金融危機発生以降、今年三月までに約4万人の在日ブラジル人が日本を離れていることが分かった。特に今年に入ってからは月8000~9000人という高いペースでの離日が続いており、四、五月分も同じペースなら、すでに5万人以上が帰伯していると予想される。その一方で、減少傾向にあるものの依然として訪日も続いている。

 一般的にデカセギで訪日、定住する在日ブラジル人が得ている在留資格は、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」の四種類。
 日本の法務省が発表している月別の出入国管理統計によれば、この四種類の在留資格で滞在するブラジル国籍者のうち、昨年九月から今年三月までに5万6977人が日本を出国した。(注=以下の数字は全て前記の四在留資格に関するもの)
 一方で同じ期間に1万7330人が日本に入国した。再入国者の重複もあると思われるが、単純計算で経済危機発生以降、差引き3万9647人が帰伯したことになる。
 ちなみに昨年四月から今年三月までの一年間で見ると、前記在留資格のブラジル人のうち8万21人が出国、3万9349人が入国しており、差引き4万672人。減少数の大半が昨年九月以降のものであることが分かる。
 二〇〇七年末には31万6967人(法務省統計)を数えた在日ブラジル人。経済危機発生の後、減少が目立ち始めるのは昨年十二月からだ。
 それまでの出国者は月4000~5000人程度だったが、昨年十二月には8476人に倍増。今年に入ってからは毎月1万1000人以上のペースで日本を離れている。
 特に目立つのは、主に三世に与えられる「定住者」の在留資格。今年一月から毎月6000人以上が出国している。
 さらに、より定住傾向が強いと思われていた「永住者」でも、出国者の数は昨年十二月に2214人、一、二月は2500人以上、三月は3000人を超えた。
 その一方で、減少傾向にはあるものの、ブラジル人の日本への入国も続いている。
 入国者数についていえば、金融危機発生前の昨年八月までは毎月3000人台後半から5000人を数えたが、九月以降徐々に減少。今年二月には2000人を割り込んだ。はっきりしたことは分からないが、これらの多くは再入国許可で入国した人と推測される。
 三月の一カ月間だけで、在日ブラジル人の数は9373人減少した。四、五月も同様のペースで減っていると仮定すれば、すでに5万8393人が帰伯した計算になる。一般的には帰国デカセギは3万人と言われているが、それをはるかに上回る数字だ。
 日本政府の帰国支援事業にともなう再入国制限期間が原則三年とされたことで、同支援事業に対する申請が増加しているという。さらに、失業保険受給期間が終了する人も増えると見られることから、帰伯ペースは今後さらに増加することも予想される。

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