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アマゾンを拓く=移住80年今昔=【ベラ・ビスタ編】=第6回(終)=移民悩ませた川に架橋=橋本自治会長「ついに征服」=野地さん「もう死なんといかん」

ニッケイ新聞 2009年6月16日付け

 移住地最高齢の橋本房枝さんの長男、橋本博美さん(58)は、「父の選択はいい事だったと思いますよ」としみじみと語る。
 「ようやく英語のアルファベットを覚えた」十二歳で入植。「第一陣の人が入って十年経っていたから、そんなに苦労はなかった。先住者の人に色々教えてもらってね」と控えめに話す。
 六八年に創立された自治会の現会長を務め、〇三年入植五十年祭も会長として式典を執り行った。子供も減少で日本語学校も閉校、自治会活動は少なくなったが、忘年会や盆踊りは移住地の楽しみとなっている。
 エフィジェニオ・デ・サーレス移住地出身の妻ひとみさん(52、福岡)と養鶏業を営み、週二日は自らハンドルを握る。マナウスまで卵の販売のため、バルサに乗るためだが、その生活もあとわずかとなるようだ。
 「川もついに征服されるね」――。
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 現在、マナウス市からベラ・ビスタ移住地に架かる橋の建設が進んでいる。外国資本による工場用地が手狭になったため、対岸に造成されることが決まった。四月中旬にはルーラ大統領も視察に訪れ、完成は二〇一〇年三月が予定されている。
 エドゥワルド・ブラーガ州知事は、世界から注目されるアマゾンの環境保護には、企業誘致が最善の方法と説く。
 「一頭の牛を飼うには一ヘクタールが必要。それだけの土地で何台のバイクが生産でき、何人の雇用ができるだろう」
 すでに他州から土地の買収に訪れる人もおり、マナウスとの大動脈となる周辺は俄かに活気づき、土地の値段も上がり始めているという。
 半世紀以上、日本人移民を悩ませ続けてきたネグロ川の向こう――時には蜃気楼にも見えたマナウスと地続きとなる。
 野地さんが「やっと橋が出来るけど、もう死なんとならん」と苦笑いすれば、宍戸さんが「マナウスに住んでる家族が週末に遊びに来るよ」と笑顔で応えた。(おわり、堀江剛史記者)

写真=(上)「川もついに征服されるね」。現在も週2回はバルサ(後方)に乗る橋本博美さん。カカウ・ピレラの港で/移民らを悩ませ続けたネグロ川の架橋工事が進む。2010年3月完成予定

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