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糖尿病と心臓病の関連も=東北大学=認知症研究の目黒教授=宮城県人の追跡調査報告

ニッケイ新聞 2009年8月25日付け

 「老人性認知症の基礎知識」をテーマに、五月二日ブラジル宮城県人会館で講演を行った東北大学大学院医学系研究科・目黒謙一教授(医学博士、宮城県)は、その後ブラジル宮城県人の追跡調査を行った。
 目黒氏は高齢者高次脳医学教室において認知症の研究をしているが、第一回調査は一九九七年の来伯時に宮城県人会所属の六十五歳以上百六十六人を対象に行った。認知症有病率は七・八%と報告された。
 今回は高齢者移民の健康管理に役立てる目的で、前回の調査結果を元にその後の追跡調査を実施。前回の対象者百六十六人中連絡可能だった百八人から情報を聴取し、十一年間の経過から死亡原因、認知症の発症率を調査した。結果は以下の通り。
 百八人の二五%が死亡。九七年当時六十五歳から六十九歳だった高齢者は全員生存、七十五歳以上だった高齢者では五〇%以上が死亡していた。
 死因で一番多いものが心臓病で、全体の二八%を占めた。次の死亡要因は脳卒中となる。高血圧や糖尿病、心臓病、脂質異常、腎臓病などの脳卒中の危険因子を有する人は全体の五四%にのぼった。
 九七年当時には認知症でなかったが、その後発症した人は死亡者全体で三一・六%、生存者全体では三二・三%に及んだ。
 今回の追跡調査から、目黒氏は生存率と死亡原因に関し「日本人の三大死因と比較しブラジルで心臓病が最も多かったことは、ブラジル移民の糖尿病有病率が日本より三倍多いことに関係していると考えられる」とし、「糖分を多く摂取する移住者の食生活は、改善の余地があるのではないか」と考察した。
 認知症とその原因疾患に関しては「死亡者・生存者共に三二%という発症率は、特に日本の調査結果とは変りがないが、死亡率が高いため見かけ上は低い値である」とし、「今後も認知症に関し、正しい知識の啓発と二次予防(早期発見・早期治療)を広める必要がある」と見解を述べた。

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