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「人生の若さの秘訣笑顔から」=席題1位は藤倉さん=第56回全伯川柳大会=40人が句をひねる

ニッケイ新聞 2009年9月18日付け

 ぶらじる川柳社(柿嶋さだ子主幹)主催、各吟社後援による「第五十六回全伯川柳大会」が六日、リベルダーデの老人クラブ連合会会館で行われ、サンパウロ市やパラナ州ロンドリーナ、ローランジャ、クリチーバ、パラナバイなどから柳人四十人が集まり句をひねりあった。柿嶋主幹によれば、全伯の柳人は百数十人。老齢化が進んでいるとはいえ、大会はいつもどおり和やかな雰囲気で進められた。

 先没柳人へ黙祷後、柿嶋主幹があいさつ。来年は同社が創立六十周年であることに触れ、「最盛期には海外最大の川柳国と言われたもの。老齢化で柳人は減っているが、まだ川柳の火は燃えている。年一回の出会いの喜びを分かち合いましょう」と力強く述べた。
 来賓として来伯中の細川周平・国際日本文化研究センター教授やブラジル日系文学の駒形秀雄氏が出席。「現代の皆さんの句を知りたい」と参加した細川さんは、俳句・短歌を通してブラジル移民の心情をつづった『遠きにありてつくるもの』(みすず書房)の著者でもある。川柳に関する資料が多く残されていないことを嘆き、「亡くなる前に資料館に寄付を」と呼びかけた。
 また、オザスコ西聖吟社を代表してあいさつに立った斉藤立穂さんは、「移民百一周年の節目に、心の友であり花である川柳が、絢爛豪華に咲き乱れることを心から願う」と述べた。
 同社会計報告後、九年間同誌の編集を務めている山崎栄治さんが今年で辞するにあたり挨拶。後任には今立帰さんが就く。
 自己紹介後に発表された席題は「秘訣」。それまで和やかな表情を浮かべていた柳人らは、顔を引き締めて集中。雨音が聞こえる中、辞書を片手に頭をひねった。
 真剣な表情を浮かべる木村トミコさん(86、熊本)は、七十代後半で川柳を始めた。「赤間学校で日本語を五十年教えていた」というが、「再勉強ですよ」と笑いながら向上心を覗かせる。
 この日訪れた最古参の塩飽博柳さん(91、岡山)は、カンピーナスで唯一の柳人で、その歴六十年以上。
 「面白くなかったらとっくに辞めてる。自分が大きくならなきゃいかんという気持ちで続けてきた」と塩飽さん。「二年前にこの大会に集まった参加者は、今日はほとんど来てない。老齢化してるね」と寂しそうな表情を浮かべていた。
 昼食を挟んで席題投句、互選、披講(句会で選ばれた句を読み上げて音律を楽しむこと)が行われ、七十八句の中で最高点の十九点だった「人生の若さの秘訣笑顔から」(藤倉澄湖さん)が一位に輝いた。席題、特定選、一般選入賞者へトロフィーが贈られ、午後四時過ぎ、来年の再会を誓って解散となった。
 以下、入選五位までを紹介する。(敬称略)
 【特定選】一位「咲くまでの試練語らぬこぼれ種」内田秀章二位「飽食に心が飢えてゆく怖さ」谷沢和夫三位「我をひとつ外すと水は澄んで来る」平谷伊佐四位「私にも未だ手付かずの明日がある」鈴木静子五位「百年の歴史刻んだ鍬の自負」谷沢和夫
 【一般選】一位=(同)鈴木静子二位「清貧の家にたくましい子が育ち」上口一歩三位「つまずいた時から強い人になり」青井万賀四位「小粒でも実る力を持った種」森山天拝五位「生きるため時には苦い水も飲む」小野田仲江
 【席題「秘訣」】一位「人生の若さの秘訣笑顔から」藤倉澄湖二位「上達の秘訣はたゆまずする努力」荒井花生三位「和を計る秘訣の鍵を母は持ち」那須アリセ四位「一歩引く秘訣のコツで長続き」平谷伊佐五位「インタビュー秘訣を聞いて締めくくる」山岡樹代子

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