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FGV調査=所得格差是正で経済牽引=国内消費は押しがけ=変則起動は長続きしない=変革時代を生き抜くには

ニッケイ新聞 2009年11月4日付け

 FGV(ジェットゥリオ・ヴァルガス経済財団)社会政治部は2日、生活扶助金制度や最低賃金年金などによる所得格差是正政策が2009年度のルーラ政権経済を支える柱であったと発表したことを1日付けフォーリャ紙が報じた。世界を襲った金融危機の中で、ブラジル経済を調査しての結論と見ている。勤労者所得は2008年、所得格差の是正を優先的に進めた過去7年を上回った。消費者が国内市場を支えたことで、ブラジルは恐慌を突破できたようだ。

 2008年の金融危機がブラジルの産業形態を一変させ、2009年は変革の年といえそうだ。二次産品輸出が衰退し、一次産品輸出国へ変わりつつある。
 ブラジル経済は、雇用を生む生産経済から不労所得の金融経済へ変化しつつある。
 社会福祉政策のお陰で所得格差の是正が行なわれ、消費を刺激し経済の歯車を回すのはよいが、これは止まったエンジンを下り坂で再始動させる押しがけといえる。金融危機が再度来れば、また止まる危険がある。
 社会福祉政策で底辺層を潤し、景気を刺激する経済政策は、経済の歯車に均等な力が配分されていないことを意味する。経済の局面でいつ、無理が生じるか分からない危険性があることを知っておく必要がある。
 ブラジルの工業化政策は頓挫し、農業に遅れをとった。都市部は、地方部に遅れをとった。南部と南東部は、北部と北東部に遅れをとったと、IBGE(ブラジル地理統計院)やダッタフォーリャは報じた。
 北東部のABCクラスは金融危機前の2008年8月、12%も所得が増加。危機後の2009年8月も、殆ど危機の影響がなかった。南東部のABCクラスは同期0・8%減でサンパウロ市が支えた。もしも、ブラジルにボベスパがなかったら、事態はさらに悪化していた。
 Ipea(応用経済研究所)の調査によれば、最低賃金の引き上げによる所得格差是正は、16%に過ぎなかった。それが生活扶助金と最賃年金による是正は、75%の効果があった。ブラジルの所得格差是正に貢献したのは、この二つであったといえそうだ。
 Pnad(全国家庭調査)によれば、最低賃金に連結する生活扶助金や年金、その他の社会福祉制度は、最賃の調整が命綱となっている。特に消費市場ではこれから、最賃の影響が年々大きくなる。所得是正による相乗効果は、最賃の調整どころのものではない。

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