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CIATE国際フォーラム=「求職コーナー大混雑」=日本の厳しい状況説明

ニッケイ新聞 2009年11月4日付け

 CIATE(国外就労情報援護センター、二宮正人理事長)は10月25日、2009年度CIATE国際フォーラム「地域コラボラドーレス研修セミナー―世界的危機に直面したデカセギ者」を文協小講堂で開催、大学関係者や政府関係者ら9人が講演を行った。デカセギ経験者、その家族など約120人が参加し、共に問題を見つめ直した。
 愛知淑徳大学専任講師の小島祥美さんは、「子供たちは市民の外交官、両国を愛する子供たちを大切に」と教育現場の危機を訴える。
 日本の公教育において外国籍の子供は就学義務の対象外となり、「日本国籍を持っているかいないかで就学率に違いがあった」と指摘。2008年6月から今年6月の調査では世界金融危機で閉鎖したブラジル人学校は15校、生徒数は3分の1へと減少している。
 三重県鈴鹿市では、雇用対策と外国人児童の教育環境の充実に力を入れる。同市教育委員会の水井健次教育長は、「我々は教育者として子供の幸せを考えた環境を整えていきたい」と話し、「外国人児童の多さは、鈴鹿市の弱みではなく強みとして捉える。児童の人権教育を推進していく」と宣言した。
 「日本の失業率5%は見かけ上高くないが、それは誤った判断である」と厚生労働省職業安定局の外国人雇用対策課の山田雅彦課長は強調する。
 どんな不況でも3K労働には流れなかった日本人労働者が今回の不況では変ってきたとし、「日本人と日系人が仕事を奪い合う状況。当然日系人が不利になる」と説明。
 派遣会社が次の仕事を紹介できない状況下で、ハローワーク(職業紹介所)には日系人求職者が押し寄せる大混雑をみせる。その状況を受け、厚生労働省は日系人向け支援機能を強化。
 通訳を配置したハローワークを126箇所へ、通訳配置時間を6倍へと増やしたほか、市町村と連携した相談窓口を31カ所開設、専任相談員を11人から197人へと充実させた。日系人専門ハローワークの立ち上げも検討されている。
 山田課長は、外国人雇用対策予算が去年に比べ10倍に増えたことに言及し、「この1年で活動の主体は個々の自治体ではなく国となった」と主張した。
 青森中央学院大学の尾崎正利教授は、外国人が多い名古屋ふれあいユニオンやユニオンみえの労働組合を紹介し、労働組合としての団結の可能性を述べる。ネットワークや組織力の重要性を強調し、日系人がオーガナイザーとして活動を支えている点に注目した。
 「日本から戻ってきた皆さん、ブラジルの市場にどのような能力を提供できますか」と会場に質問を投げかけたのは、コンサルタント会社Reduplan Aliancas Estrategicasのレナート・ブツエン社長。「デカセギ労働者は責任感、時間の正確性、忍耐力、組織力を身につけて帰国してくる。その能力を生かし新たな事業に挑戦してみては」と会場を活気付けた。
 デカセギ経験のあるハシモト・マリオさんは、「お金を稼ぐことに集中するか、家族との時間を大切にするかジレンマがあった」と当時の心境を語り、会場の共感を呼んだ。バストスから訪れたカキモト・セルジオさん(43)さんは、「デカセギ経験も肯定的に捉え、帰国後起業など考えてもいいのでは」と講演から刺激を得たようだ。

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