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■記者の眼■良い制度だけに残念=受け入れ体制整備を

ニッケイ新聞 2010年1月9日付け

 日本の公教育の現場には、児童・生徒の半分を外国人が占める教室まであり、外国人子弟にどう対処するかは、ここ20年あまり大きな課題となってきた。
 それに加え、金融危機後、両親が失業してブラジル人学校に通っていた子供たちが授業料を払えなくなり、日伯式のどちらの学校制度でも教育をされていないケースが急増しているといわれている。
 成長の早い子供だけに、教育は一刻を争う問題だ。その意味で、日本の現職教育者が、ブラジルの現場を直接体験できる「現職教員特別参加制度」は、大変有意義なものとして期待が高まっている。
 制度として必要性が高いにも関わらず、実際に派遣された初期生から不満の声が上がっているのは、初回故の調整不足だとはしても、非常に残念な状態だといえる。
 長い実績のある「日系社会青年ボランティア」制度の枠内で現職教員を受け入れるものであり、今までの青年ボランティアは派遣先の日本語学校で活躍、貢献してきた。
 同じようにできなかったのはなぜか。今回受け入れ先になっているブラジル学校(コレジオ)は新規受け入れ先が多く、JICAからの説明が足りなかった可能性が指摘されている。
 日系人経営とはいえ、多くのコレジオでは、もともと日本語教育はそれほど重視されておらず、「日本から来てもらってまで…」という状態だったのではないか。需要が少ないところに送り込もうとして、なおかつ説明が不足したが故に起きた状態かもしれない。
 今回の派遣先の中でも、スザノ日伯学園など数校では、設立当初から日本語教育に力を入れて青年ボランティアをしっかりと受け入れているが、そのようなコレジオはむしろ稀なケースかもしれない。
 もともと法律上、ブラジル教育省の認可する教員資格のないものには、コレジオでの正規の授業はできない。ブラジル人教師が、日本の公立校で正式の授業をできないのと同じだ。そのことは重々、参加者に前もって伝えておく必要がある。
 現職教員の多くは日本語教師の資格を持っていないという問題はあるが、正式な授業ができないなら、従来の青年ボランティア同様、塾扱いである日本語学校(日本のブラジル人学校同様)に派遣し、たっぷりと良質の現場を踏む方が体験という意味では良かったのかもしれない。
 と同時に、今まで青年ボランティアとして、日系社会で日本語教師を体験してきた数百人の人材にも目を向けたらどうだろうか。
 彼らを日本の教育現場に採用する工夫も必要だろう。であれば、すでに外国人子弟を扱うノウハウをもった青年が日本国内に散らばっている。
 資格云々でそのような有用な人材が、求められている場所で活躍できないのは本当に残念なことだ。    (親・深)

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