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亜国=カブトムシめぐる汚いビジネス戦争=《中》=人気が引き起こす密輸

ニッケイ新聞 2010年1月28日付け

 カブトムシ コガネムシ科の大形の黒い昆虫。オスは頭に角を持つ。幼虫は堆肥や枯葉を食い、成虫は夏に現われ、樹液を吸う。
 クワガタムシ 大型の甲虫で、オスのあごは異常に発達して鍬形に似ている。幼虫は朽木の材部を食い、成虫はクヌギ、ナラ、柳の樹液を好む。
 いずれも、成虫は初夏、夜間の気温が20度を上回る日がつづくと地上に出てくる。だいたい6月から7月の蒸し暑く風のない日に一斉に飛び立ち、成虫の寿命は1~3ヵ月ほどで、外気温と餌の量に大きく左右される。
 日本では、その独特な姿形から「カッコいいもの」として見られ、子供に人気があり、17世紀(徳川時代)の頃、小車を引かせて遊んでいた。そのほか、小さい子どもが糸をつけて歩いたり、さらに大きな子どもになると大きさを競い合い、相撲を取らせたりした。
 現在だと、カブトムシが現われる時期は、小中学校が夏休みに当たるため、深夜から早朝にかけて山林に生息しているのを捕らえに行くことが楽しみ。それを飼育し、観察日記を夏休みの自由研究として記録する子供も多い。
 こうして、人気が高いためカブトムシを商品として売買することが1970年代からはじまり、大人にも愛好家が多い。
 1999年に植物防疫法が規制緩和され、海外産カブトムシの一部が解禁となり、日本国内で2005年現在で53種類の輸入が可能になった。
 販売専門店があり、初心者向けの入門書、飼育法や飼育日記、いろんな情報を集めた季刊誌、本、雑誌が出版されている。
 餌はバナナに堆肥、昆虫ゼリーなどだが、これも店で扱い、そのほかカブトムシ2匹のつがい、寝床、篭、エサ台もセットになって売られており、寝床は1週間に一回換え、エサになる堆肥は1キロ2000円だ。通信販売もする。
 飼っているうちに次の世代に増やすことを楽しみにしている。下痢したり、写真取ると怒る甲虫もある。
 ところで、このカブトムシ、クワガタムシの値段は、初心者向けだと400円から1000円、国産の幼虫の番(つがい)が1200円からあり、3000円、1万8000円、3万円のもの、コロンビア産大型つがいで8万円になる。さらに20万、30万、50万クラス、希少価値、姿形によっては一つがい100万~120万円という値段がつく入札もあった。
 つまり、カブトムシの飼育、売買はビジネスになる。だから、密輸詐欺はざらにある。10年ほど前、インド物で偽の証明書を税関に提出して通関している業者がほぼ100%、ヘラクレスという大型の昆虫90%が密輸という情報もある。
 生きた甲虫の購入者は繁殖が主な目的であり、鑑賞ばかりではない。なぜか血統主義がまかり通り、地域指定のブランド主義マニアもいる。「オオクワガタ美形コンテスト」もあり、したがって、ほかのいろんな商品と同じように産地を偽ることもまかり通る世界である。(らぷらた報知)つづく

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