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VIVA JAPAOの記録を後世に=サンパウロ州教育局=400プロジェクトに70万人参加=日野寛幸さん「恩返しできた」

ニッケイ新聞 2010年3月12日付け

 「ブラジル社会に恩返しができたかな」――。ブラジル日本移民百周年を記念として、2007年から2年間にわたり全サンパウロ州の州立校で行われたサンパウロ州教育局の日本文化教育プログラム「VIVA JAPAO」。最終的には400ものプロジェクトが実施され、生徒ら参加者数は70万人を超えた。この度、まとめとなる報告書編纂を終わらせた同事業発案者でコーディネーターの日野寛幸さん(63、福岡)は、満足げな表情を見せながら「自分でもびっくりするほど盛り上がった」と振り返った。
 出来上がったばかりの報告書を手に、「これで使命をやり終えました」と肩をなでおろす日野さん。皇太子殿下のご見学時など各プロジェクトの様子、参加校リスト、各地域でのメディアの反応などが約200頁にわたってまとめられた。
 「150周年、200周年には自分はもういないけど、百周年でどういうことをしたかこの本だけ残しておけば参考になるでしょう」と語る。
 10歳で家族移民し、大学をでるまで全て州立・国立校に世話になった。「親は貧乏でしょ。そんな中、僕ら(日本人・日系人の子供は)一文もいらずに学校に行かせてもらえたんです。恩返ししないといけない」
 ブラジルへの感謝の心が原動力となり、全サンパウロ州を巻き込む巨大プロジェクトへと発展した。
 百周年を控えた2007年は、ちょうど日野さんにとって渡伯50年、教育局に勤めて35年目を迎える節目の年。「それまで何もしていなくて、日系人として恥だと思っていた。今回、こうやって取り組むことができて良かった」と笑顔を見せる。
 最終的には350万レアルもの資金が同事業に計上されたが、文句を言う人はいなかったという。
 参加者70万人の9割は非日系人。日野さんは、「目をピカピカ輝かせて太鼓を叩く表情を見て、胸が熱くなるほどだった」と目頭を熱くして振り返った。
 「イベントではなく、学習の中に日本を学ぶカリキュラムを取り入れる」という日野さんのアイディアは大成功を収め、さらに「日系団体をブラジルの子供たちの学習の中に入れ込むべきだ」との考えは、レジストロ文協主催「平和の灯篭流し」を通じての平和学習にも繋がっている。
 日野さんは、「一人じゃなく皆の協力があってできた」と締めくくった。 
 同書は非売品、2500冊、ポ語。日系団体や参加校などに配布される。

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