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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年3月17日付け

 詩人・書家の相田みつをさんに「やらなかった やれなかった どっちかな」という言葉がある。やる前に諦めるより結果はさておき、チャレンジ精神の大事さを説いたものだろう。個人の心構えの問題ならいいが、2千人の会員を抱え、ブラジル日系団体の代表を標榜する文協ならばどうか。「美空ひばりフィルムコンサート」の企画が白紙になった(本紙7面詳細)▼文協自身が関係者4人のアゴアシ20万レアルを集めるという前代未聞の無謀な企画に本紙は当初から疑問を投げかけた。コロニアで活動する〃歌手〃の中平マリ子氏が話を持ちかけた。氏をマリちゃんと呼ぶ仲の頃末アンドレ、吉岡黎明両氏は一月末に記者会見を開いた。「ひばりさんは日本文化。企業も団体も関心を持っています!」と疑問を呈する記者にすごい剣幕でまくし立てたものだが、ボツになってみれば、メール文書で済ますつもりらしい▼評議員会で多くの反対意見を無視する形で強硬採決、文協の看板を掲げての集金活動も徒労に終わったというわけだ。日系団体のニーズも企業の感覚も持ち合わせていなかったと断じざるを得ない。ひと言で言ってしまえば、幹部諸君の見極めの甘さだろう▼会員の代表である評議員らの意見を踏みにじってでも大成功に収めれば―百歩譲って―よしとしたいが、金も集められないとはお粗末に過ぎる。やってみたけどだめでした、で済ませようとする厚い面の皮を頬かむりする手拭いは、最初に広げた大風呂敷で代わりとするか。再度、相田さんの言葉を借りるならば、失敗してもいいじゃないか、文協だもの、もとい―人間だもの、か。(剛)

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