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日本政府=半導体産業育成に協力=東芝で先端技術を研修=技術者20人が5カ月間=「一歩を踏み出した」

ニッケイ新聞 2010年9月11日付け

 ブラジル政府悲願の半導体産業育成に、日本政府や東芝が協力している。1月から6月までブラジルが誇る研究機関フォン・ブラウン研究所の若手技術者20人を東芝が受け入れて半導体設計研修を特別に行い、この2日に在伯日本国大使館と経済産業省の共催で帰国歓迎セレモニーがサンパウロ市内ホテルで行われた。帰伯者らは口々に研修の充実振りを語り、企業風土や文化の違いなど先端技術以外にも感心した様子だった。

 06年の地デジ方式選択にあたり、ブラジル政府は半導体工場の設置を強く要望していた。それには大きな市場と80社にのぼる裾野産業が不可欠であり、日本側は実現可能性調査を重ね、将来的に半導体産業をブラジルに根付かせるために、技術研修による人材育成から始めることを合意した。
 今回のブラジル人若手技術者が受けた研修は、「日伯産業協力の一環として今回特別に初めて行った」(本社提携・戦略担当部長の岡村格太郎氏)という肝いりのものだ。
 開会の挨拶をした國方俊男公使は、日伯は技術と外交の力を出し合って一緒に市場を切り拓く団結関係にあると語り、「みなさんが日伯関係に深化をもたらすと信じる」と結んだ。
 続いて東芝本社の執行役専務の齋藤昇三氏も、JICAを通して半導体の専門家2人を派遣していることにも触れ、「ブラジルの半導体設計会社への投資も検討している」と明らかにした。その上で「人材育成が最優先。半導体に限らず、広い領域でブラジルの産業発展に協力していく」との姿勢を強調した。
 経済産業省情報家電戦略室長の関根久(ひさし)氏が期待の言葉をのべたあと、ブラジル科学技術省のアウグスト・ガベリア審議官は、地デジ方式選択時には「日本方式なら世界から孤立する」との反対論が多かったことを振り返り、「地デジ調印式に立ち会ったことは生涯の誇り。日伯関係は、センプ東芝が成功しているのと同様に必勝パターンを繰り返している」と高く評価した。
 地デジ調印時の覚書として今回の半導体産業育成の合意が行われた経緯をのべ、「日本政府は約束を実行してくれた」と感謝しつつも、「現状では最終目標とは程遠いが、まだ始まったばかり。今回も成功への一歩を踏み出したことを、我々の団結でそれが可能なことを証明してほしい」との熱い期待を披露した。
 フォン・ブラウン研究所のダリオ・トベル所長も「半導体産業育成に向けて大変な責任を感じている」とのべ、研修者代表フィリテ・タバラニさんは「期待以上のものを教えてもらった。研修成果はさっそく現れている」と感謝した。
 研修者20人のうち日系人はエンリッキ・ウエムラ・オカダさん、ダニエル・マサシ・マエダさんの二人。アンドレ・ナザレさんは「技術だけでなく日本文化、時間に厳密な仕事の仕方、まるで大きな家族のような会社と社員の関係など凄く勉強になった」と感心していた。

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