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第62回全伯短歌大会=青春は心にありと決めてより背すじのばして街を歩めり=男女歌合わせ、独楽吟も=参加者51人が和気藹々

ニッケイ新聞 2010年9月16日付け

 短歌誌「椰子樹」(上妻博彦代表)とニッケイ新聞社が共催する『第62回全伯短歌大会』が12日、文協ビル内エスペランサ婦人会で開催された。時には笑いも起こる和やかな雰囲気のなか、参加した51人が思い思いの歌作りにいそしんだ。上妻代表はあいさつで「1年1回、健康な顔を見せ、作り手同士をつなぐ区切り」と一同に会したことを喜んだ。

 先輩歌人に対して黙祷が行われた後、初参加した浦野マルガリータ、川上淳子、滝友梨香、谷口範之さん4人が紹介され、歓迎の拍手が送られた。
 毎年恒例のニッケイ新聞による題詠は「春」。まさにポカポカ陽気の当日、参加者らは辞書をひきひき、ペンを短冊に走らせた。
 互選による一位は、「青春は心にありと決めてより背すじのばして街を歩めり」(寺田雪恵、23点)、2位は、「春の野に芽吹く生命のたくましく自ずと吾身に力湧き出ず」(山崎美知子、13点)が選ばれた。
 『第二回ブラジル短歌賞』の講評で、選者の高橋瑛子さんは、該当者はいないとしながらも谷口範之さんの作品「母恋」を佳作に選んだことを発表した。
 事前に作品を送り、選考が行われた大会成績の発表があった。
 代表戦の部では、「かかる日の我にも来るやと思いつつ老人ホームの友を尋ぬる」(藤田朝日子、10点)、「没りつ日に茜に染まる地平線野鳥の影は黒くながるる」(渡辺光、7点)。
 互選高点歌では、前出の藤田さんの作品が36点と一位、二位は「病癒え厨に向かう老い妻に安堵の思いしみじみと沸く」(小坂正光、30点)、三位=上妻泰子、岡本喜子(各27点)。
 総合点では、岡本喜代子(40点)、小坂正光(38点)、藤田朝日子(36点)、上妻泰子(32点)、金谷治美(29点)となった。
 最初と最後の言葉が決められている「独楽吟」では、「昼寝」「楽しむ」を織り込んだ一首に頭を捻らせた。
 「昼寝せる妻の横顔ながめつつ處女の頃を顕たせ楽しむ」(藤田朝日子)、「昼寝する息子の枕辺で紙飛行機造りて孫は一人楽しむ」(上田幸音)がそれぞれ上位に選ばれた。
 女性が上、男性が下の句を詠む「アベック歌合わせ」は、「もしかして何処かで逢える予感して背広姿で春の街行く」(新井知里、藤田朝日子)が一位に、「君と会い初めて握る手のぬくみ一会というにはあまりに惜しき」(崎山美知子、上妻博彦)だった。
 バウルーから参加した酒井祥造さんの閉会のあいさつで幕を閉じ、参加者らはお互いの研鑽を称えながら、来年の再会を約束していた。
 マリンガから参加した川上美枝さん(92、香川)は、「毎年、自分の作った歌を批評してもらえるのが楽しみ」と笑顔を見せていた。

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