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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年9月28日付け

 いささか旧聞ながら東京で開かれた世界柔道選手権について少し。「精力善用」「自他共栄」を唱えた柔道の創始者・嘉納治五郎の生誕150年でもあったのだが、日本の選手らはよく頑張って金10を始め銀、銅メダルを23個も獲得したのは素晴らしい。日ごろの厳しい練習に耐えたのが実を結んだのだが、もっと大きいのは試合の審判規定が改正され、きちんと組んで技で勝負の本来の姿が取り戻されたのを高く評価したい▼これまでにも明らかに誤審とされる試合はあった。最も有名なのは2000年のシドニー五輪で100キロ超の篠原信一が仏のダビト・ドイエと決勝戦で対決したときである。ビデオで試合を見たが、ダビデの掛けた内股を篠原が透かし、ダビトは横転し背を畳にしひっくり返った。明らかに1本である。ところが、審判はこれを認めず篠原の判定負となり金メダルを手にしたのはダビト選手であった▼勿論、日本は抗議し世界柔道連盟も後日「誤審」を認めている。次は世界選手権リオ大会であり、鈴木桂次がリトアニアの選手に負けたが、これも審判の誤審の意見が強く、サンパウロ市の岡野脩平氏の辛らつな批判をニッケイ新聞も報じている。とにかく、柔道着の袖を極めて細くしたり、組み手争いばかりでタックルまがいの足取りと奇怪なものだけなのである▼私事で恐縮ながら柔道の見物は大好きで4月29日の日本選手権は楽しみだった。吉松、夏井や醍醐10段。大沢10段の払い腰の切れ味に感動したりもした。神永、猪熊も試合がきれいで美しい。そんな「本物」が戻った大会での日本勢の活躍は何とも嬉しく頼もしい。(遯)

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