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課題は南西方面の防備=防衛大=五百旗頭校長らが講演=日本の国防最前線を語る

ニッケイ新聞 2011年3月3日付け

 伯防衛省、陸・海・空の士官学校訪問ために来伯した防衛大学の五百旗頭真校長、大田文雄教授が、2月26日夜、サンパウロ市の広島文化センターで一般向けの講演を行い約130人が訪れた。政治、歴史学者で、日中両政府に報告・提言を行う「新日中友好21世紀委員」の委員でもある五百旗頭校長は、中国の大軍拡による東アジアの軍事バランスの変化、尖閣諸島など南西方面の国防の最前線について話し、来場者からは「もやもやがすっきりした」との声が聞かれた。
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 両氏の来伯の目的は同大と士官学校間での生徒交換留学等の事業開始を念頭にした視察だったが、パンアメリカン日系人協会(矢野敬崇会長)、ブラジル日系協会(京野吉男会長)、広島文化センター(大西博巳会長)の共催で講演会が開かれることになった。
 大田教授は昨年策定の新大綱にもとづき防衛省、自衛隊の基本情報をあげ、ブラジルに比べて構成人数等は少ないことなどを説明した。
 五百旗頭校長は、7世紀からの段階的な日本の躍進を説くことから初め、話は戦後に進んだ。
 戦後日本は、平和的な発展『東アジアの奇跡』を導いたが、例外の中国、北朝鮮が現れた、と切り出す。
 邦人拉致を続けた北朝鮮については、2年前京都舞鶴の軍港を訪れ、高速ミサイル艇を視察。時速80キロまで加速する同艇を6艘配備してから一度も不審船が現れていない、と説明した。
 ここ20年で中国は軍事費を20倍にしたが、日本は増額なし。経費削減、軍縮を図り必要経費を捻出しているという。しかし、東アジアの軍事バランスは刻々と中国有利に傾いており、日本は新たな「防衛計画大綱」に「動的防衛力」を掲げ、精鋭による国内外で機動力ある隊を構築するとしている。
 「中国は国内法で海底資源のある尖閣諸島等を領土に編入した。南西方面の防備が大きな問題、非難ばかりの菅内閣ですが、偉かったのはその方面の防備をしっかりすると表明したこと」、また「日本に軍拡の意向は無いが、もし中国が手を出したら、痛い目に合わす力を日本は持とうと思う。防備の無い先島諸島に限られた数だが自衛隊を配備する。(多数戦車を並べるのでなく)空と海の質を高い位置で保つことが大切」と提言した。SSMという高性能の誘導ミサイルの一種を開発し、陸上自衛隊が多く所有しているとも。
 その一方で、「相互依存の関係を深める今の時代、中国のように軍事力を振りかざすことは大変心ない事」と語った。
 最後に、中国とブラジルは対照的とし、「恵まれたブラジルが世界の国々と協力していこうとする姿をもっと大切にしていきたい」と結び、拍手の中舞台を下りた。
 出席者の50代日系二世の女性は日本の最近諸外国への対応に「やりきれない思いだったが、今日の話を聞いてすっきりして、安心しました」と感想を述べた。
 運営側の平崎靖之日系協会理事も「講演会は成功。素晴らしい話が聞けた」と喜びの表情を見せた。

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