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「こんなにいる日系失業者」=グルッポニッケイ=再就職セミナーで=帰日志向の危機後帰伯者=平均給与上り求人増だが

ニッケイ新聞 2011年3月5日付け

 「BRICsで好景気だとか失業率が下がったとかいいますが、ここに見に来てください。まだこれだけ日系失業者が溢れているんです」。帰伯者を中心に99年から再就職支援しているグルッポ・ニッケイの島袋レダ代表は2月24日夜、今年初の定例再就職セミナーに参加すべくサンパウロ市の東洋会館に集まってきた100人以上の失業者を見ながら、そう悲痛な表情で訴えた。金融危機以降の帰伯者数はピークを越えて落ち着いてきた。しかし「今回の帰伯者は今までとは全然違う」と島袋代表は質的変化を警告する。

 再就職の心構えを説く破入マルコスさんの講演に会場を埋めた相談者は聞き入った。年頭から当地で人材サービスを始めたフジアルテ社員二人も来場し、島袋代表らと情報交換する。
 危機以前の08年前半の毎回の相談者は70〜100人程度だった。危機後は一気に120〜180人と倍増する勢いで、応対にてんてこ舞いだった。昨年中頃以降は70〜130人と落ち着いたが高止まりしている。
 数年前ここで紹介する仕事の月収は500〜600レアルだったが今は800〜1千レに上がり求人数も増えている。ところが「15年以上日本にいた人は、今でもあちらに戻りたがっている」と島袋代表は指摘する。
 常時1千人以上が求職者リストに登録されており、その半分が帰伯者。島袋代表は「帰伯者には1年以上失業している人が多く、自信がないタイプ、強い不安感など心理的問題を抱えている人が多い」と分析する。どこか「日本でうまく行かなかった」との引け目が感じられるとも。「15年ぐらい滞日して日ポ両語とも教育が中途半端、日本の高校の卒業証明書がない人が目立つ。そんな人が就職先を探すのは難しい」と眉をひそめる。
 同団体役員の中林ミルトンさんも「危機以前、元デカセギの参加者は3分の1程度だったが今は6割。危機以降に戻ってきた人たちは10年、15年、20年もの長期滞日者ばかり」と以前との違いを強調する。「長いこと日本にいた人は専門知識や技術がなく年齢も高いから再就職は難しい。今なら若い人が少し専門知識を勉強すれば日本に行く必要ないほど仕事がある。〃いい仕事〃は少ないが、とりあえず家族が一緒に生活できる程度の仕事はあるはず」。
 さらに「日本に行くなら帰伯後の計画を決めてから行くとか、永住を決意するかどちらかだ。ずるずると行けば留守家族との繋がりを失う危険がある」と注意喚起する。
 会場には40人もの日系ボランティアが集まり世話をする。島袋代表は「持ち出しでこの活動を続けている。何度辞めようと思ったかしれません」と言う。最初から協力するある日系女性(50代、三世)は、「レダさんは12年間も本業を横に置いてこの支援に打ち込んでいる。その姿を見たら手伝わざるを得ない」としみじみ語った。
 バストス市から出聖してセミナーに参加した技術移民の近広正雄さん(57、広島)は、6年前に訪日して神奈川県で就労したが金融危機後に失業し、昨年8月に帰伯した。「日本は良くなる兆しが見えない。こっちは五輪もあるし、なんとかブラジルでやって行きたいと期待している。さっそくフジアルテにも相談に行ってきます」と語った。
 同グルッポへの相談は電話=11・3399・2404/3754まで。

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