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JICA=現職教員ボランティア一期が帰国=ポ語の習得、人事の問題=真価問われる今後の活動

ニッケイ新聞 2011年3月11日付け

 国際協力機構(JICA)が実施する「日系社会青年ボランティア現職教員特別参加制度」の第一期派遣11人が約1年8カ月の活動を終えて帰国するにあたり、2月24日サンパウロ市内で報告会が開催された。
 同制度は、在日日系人子弟の支援の一環。公立高校の現役教師を中心としてブラジルの学校に派遣し、活動を通じて文化の違いやポルトガル語の習得を図るもの。帰国後は日系人子弟、保護者と学校の橋渡し的存在として活躍することを目的として2009年に初めて派遣された。
 芳賀克彦JICAブラジル所長は報告会冒頭、「初めての卒業生。日本に帰ってからの活躍を期待したい。今後ともこの制度を広報し、長く続けていきたい」とあいさつした。
 愛知県知立市の伊藤志須雄さん(27)は「ポルトガル語の必要性は(一期の)皆が感じたと思う」と話す。
 日本での広報用に作られた制度のパンフレットには「帰国教員の特徴」の1つとして「ポルトガル語で児童や保護者とのコミュニケーションが行える」ことが強調されている。JICA側もポ語を使わざるをえない配属先を極力選んでいるというが、その能力には個人差が生れているよう。伊藤さんは、「今の段階より、帰国後いかに学習を続けていくかが大切」とつけ加える。
 また、派遣者自身が「組織の一部の末端」というように、人事の都合で希望通りブラジル人子弟との関わりの中で今後、上手く経験が生かせるかは分からない。
 大阪府東大阪市の大島康代さん(32)は「ポ語だけでなく、ここで得た多くの経験は他の面でも生かすことができる」と前向きに語った。
 同制度では本年度7人が派遣され、11年度は6人の派遣が決まっている。静岡県駿東郡の片桐努さん(31)は「幅広い経験をして、一般的な教員としての能力が高めることができた。ブラジル人子弟支援については一期の人間として我々のような人材がどう生かされていくかを見せていかないといけない」と話していた。帰国後の活躍で同制度の真価が問われていくことになりそうだ。

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