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イビウナ庵便り=中村勉の時事随筆=11年3月14日=東北関東大震災

ニッケイ新聞 2011年3月15日付け

 3月11日14:26(日本時間)東北・関東沖に起きた地震はM9.0の巨大地震、地震源は200km x 500kmの地帯で、1000年前にこれに匹敵する地震の記録あり、と報道された。当地TVも毎日繰返し大きく取扱った。毎回心配顔の日系移民がインタビューされ、ブラジル国民のお見舞の言葉には、決まって「日本人の冷静さと規律」を世界が手本にすべき日本文化と賞賛するコメントが付け加えられた。
 日本が地震・津波大国として知られ、対策・復興の先進国と見られている為か、「その日本にしてこれだけの大災難にあっている(他の国に起こったら、どんなことになっていただろう!)」というコメントもあった。原発先進国日本の、福島原発危機(Japan Nuclear Plant Crisis)の対応は世界の注目を集めている。日本が炉心溶融をどう乗り切るか、原発安全操業に対する科学的関心が持たれている。
 すべてが想定を超えていた。地震専門の大学教授が放った「無念だ」の一言が胸に響いた。今後どうすべきか?と質され、「外国の専門家も万全と認めた田老町の防波堤も今回の津波は楽々と越えた。これからは発想を変えて安全な高台に町をつくるべきだ」と、挑戦ではなく、自然と共存する道の選択を示唆した。
 今回の福島原発事故に関し専門家の説明を聴いて、日本の原発が三重の安全対策を打っていたことが分かった。それにも拘わらず、自然の破壊力はもっと大きかった。人間の知恵を超えていたし、これからも人間と自然の知恵比べの結果は、人間にとっては想定外ということになろう。ここでも、挑戦でなく共生の思想が人間の側に求められているのかも知れない。電力供給の30%を原発に頼っている危うさを考慮すると、消費者はもっともっと節電に努めるべきだ。
 被害の甚大さは目を覆うばかりだ。今は一人でも多くの人命救助を祈るばかりだ。人命第一の点で、政治が党派を超えて一致団結の姿勢を示したのは、日本国民に希望の光を灯した。命の次は復興だが、ここでも国民的団結が求められる。今回いただいたお便りの中に、3月11日から翌朝にかけて都心から自宅に苦労して帰る人々を観て「これからが大変だと思いますが他人にたいする気配りなぞ戦後復興のための一体感に通ずるものを感じました」とあった。TV映像でも同じ感触を得た。
 数人の方から、3月11日徒歩で帰宅したとの便りを頂いた。あるいは6時間、或いは8時間、又ある人は夜中歩いた、とあった。息子は「今夜は空港で寝るよ」と大阪空港から、娘は「まだ三軒茶屋」と歩きながら、ブラジルに電話してきた。ケイタイという利器はより国際的だ。

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