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刊行物『国境地帯』=第25号で休刊へ=菅沼さん「書き手少なくなった」

ニッケイ新聞 2011年5月14日付け

 文芸同人誌『国境地帯』(編集・発行責任者・菅沼東洋司)の第25号が刊行、今号をもって休刊となる。
 前山隆氏「大戦とロータリークラブ—山本喜誉司のブラジル日記その他より—」、書簡「三十五年前の山への手紙—その4」(天野鉄人)、創作「慈父」(神林義明)、「岐路」(峰村靖子)、随想「移住・独立・離農まで」(瀬尾正弘)ほか随筆など。
 同誌は、サンパウロ州アルミニオ市在住の菅沼さん(69)が主宰し、1999年2月の創刊以来、年2回編集・発行されてきた。当初小説が中心だったが、最近はノンフィクションや学術系のものも盛り込まれていた。
 菅沼さんは末尾録で休刊に至った経緯を、昨今移民小説の書き手が少なくなっていることや、自身の健康上の理由から発行を継続するのが困難と感じていた、と綴る。
 ニッケイ新聞の電話取材に、「移民の歴史が100年を超えた今、『移民とは何か』『移住で重ねた苦労を通して見えてくるものは何か』を意識し、それに向き合おうとする人がいなくなっている」と話す。
 「日常生活を描写した短い随筆のようなものを書く人は多いが、それで全編を構成すると、内容が薄くなりすぎる。自身の作品を整理したいのもあった」と休刊に踏み切った経緯を説明する。
 なお、菅沼さん主宰で年4回発行されている詩歌サロン『ふろんていら』は、現在28号まで出ており、今後も発刊が続けられる。

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