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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年7月16日付け

 早いもので「日本祭り」が、14回目になるそうだ。あれは網野弥太郎さんが音頭をとり始めたものであり、言わば「郷土食大会」の色彩が濃い。網野さんは、生まれ育った甲州の名物「ほうとう」を出品し、猛将・武田信玄が好んで食べたと喧伝し、鶏を煮込んだ汁に南瓜入りの手打ちうどんが人気となり、料理の仕方のパンフレットを読んだりもした▼あれから年を重ねる毎に「祭り」が盛大になり、物産展も賑やかだし日系で一番の行事になったのは、なんともおめでたい。勿論—それなりに失敗もある。今や料理をするお嬢さんらは3世や4世になりつつあるし、逆比例して腕に自慢の一世移民たちは、少なくなるので「味の伝承」は難しくなっている。これには裏事情もあり、本物の「お袋の味」をよく知らない若い方々の手違いもけっこう目立つ▼それでも—新しい試みもあって食道楽ではなくとも、あの会場に行くのが楽しみなご老人がいっぱいだし、青年男女も行列となるのは、とても喜ばしい。今年は蕎麦の本場・信濃は長野県伊那から手打ち蕎麦の名手が遠路を駆けつけ、あの見事な職人芸を披露するそうだから楽しみがひとつ増えたと舌が踊る▼「切りたんぽ」が売り物の秋田県では、稲庭うどんを取り寄せる。あれは江戸の頃からの名品で物凄く美味い。しかも、「切る」のではなく、素麺のように「手延べ」であり、口中での歯応えが堪らない。これはどうしても挑戦し、胃の腑をびっくり仰天させたい。と、もう胸を膨らませているが、岩手県は盛岡の韓国料理「冷麺」が、今年もあるのかなどと期待し心を躍らせている。(遯)

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