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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2011年8月6日付け

 中国・ウイグル族の独立派に警察が無差別発砲し8人を殺害や中東のシリアでは、政府軍が戦車の銃砲撃で反アサド大統領のデモ隊を攻撃するなど非人道的な行動が続く。中国の人権侵害は今に始まったことではないが、チベット民族や内モンゴルの弾圧も日常化しており、米欧を始めとする国々や人権擁護団体からは非難の声が高い▼シリアの暴動は、チュニジアの反政府運動に端を発した北アフリカやイスラム圏の民主化運動の一環であり、エジプトを始め多くの国が政権を民主派に譲っている。だが、リビアのカダフィ政権もだし、シリア政権も根強く生き残っている。TV映像などで見ると、アサド大統領の権力はかなり強く、装甲車が反対派の自動車を轢き潰したり、戦車の大部隊が堂々と行進し、路傍の石を武器に闘う庶民らの抵抗は何とも拙く力弱い▼クリントン米国務長官は、こんなシリアの現状を「虐殺」と酷評し、国連の潘基文事務総長はアサド大統領が「人間らしい感覚を完全に失った」と激しく非難したが、人権弾圧への批判に対し「内政干渉」としらばっくれる中国と同じく—シリアの当局にはまったく通じない。そして—あの蛮行が際限もなく続き、今までに1700超の無名の人々を死に追いやったのは許し難い暴挙だ▼30数年の独裁政治に辣腕を振るったムバラク前大統領も民衆の抗議には勝てず政権の座を明け渡したが、今は捕われの身となり寝たきりの状態で裁判が開かれ檻の中から証言している。カダフィ大佐は強気だがアサド大統領も、大衆が結集した力には、とてものほどに勝てないのではないかと—愚察したい。(遯)

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