ホーム | 日系社会ニュース | 「日本に恩返ししたい」=在日二世が被災地で救援=TV番組『神様のバス』=斉藤俊男さんサンパウロ市で講演

「日本に恩返ししたい」=在日二世が被災地で救援=TV番組『神様のバス』=斉藤俊男さんサンパウロ市で講演

ニッケイ新聞 2011年10月5日付け

 未曾有の大震災が日本東北地方を襲った3月11日、埼玉県で人材派遣会社などを営む斉藤ワルテル俊男さん(43、二世)は、テレビに映る信じがたい映像に釘付けになった。食糧も水もなく、冬の寒さの中で途方に暮れる住民——「何とかしてあげたい」。救援物資を集め、自家用バスを14時間走らせ被災地を訪れ、在日ブラジル人ら多くの住民を救出した。その様子は日本テレビ計のNNNドキュメント11『家族を守れ〃神様のバス〃』として放送され、反響を呼んだ。24日にサンパウロ市の国外就労者情報援護センター(CIATE、二宮正人理事長)が主催した帰伯者支援セミナーで斉藤さんが講演したおり、そのときの様子を聞いてみた。

 「最初は日本語も話せなかった」と振り返り、「自分を育て、家族を受け入れてくれた日本にいつか恩返しがしたいと思っていた」という。
 震災に直面し、今がその時だと直感した。秩序正しさは緊急事態では裏目に出る。こんな時でも日本では正式な手続きをしようと理事会を開き、支援を開始するまでに1週間以上かかる。「この1週間こそ現地では支援を一番必要としているはず。構えて待っていても仕方がない」。
 宮城県庁に問い合わせると「米の支援が有難い」との返事。10万円分の米を買いこみ、友人や従業員も協力、県道に向けて掲げた呼びかけ用横断幕に地元の住民たちも応えた。
 震災から2日目の13日の夕方、従業員、知り合いの記者と3人で仙台へ向かった。ショベルで雪や土砂を掻き分けながら、交代で夜通し車を走らせた。翌朝到着した被災地では交通機関が機能停止、病気を抱えた人々は治療もままならずパニック状態だった。
 「瓦礫の中を子供が食べ物を求めて歩いていた光景が忘れられない」。世界で最も豊かな社会のイメージが打ち砕かれ、思わず涙があふれた。「まさかこんな日本を目にするなんて」。
 同行した記者の報道をきっかけに在東京ブラジル総領事館が費用を負担してバスで救援物資を現地に届け、帰り道には帰伯希望のブラジル人をのせて帰る活動を開始した。IPCサイト7月11日付記事によれば、「4回に分けて、1万2千本の歯ブラシなど約15トンの救援物資を運んだ」という。バスにはブラジル国旗が掲げられ、被災地のブラジル人を勇気付けた。希望した日本人、パキスタン人、ペルー人らも同乗させた。
 「よく来てくれた」と誰もが助けを喜んだ。被災者らは話をする気力もない程疲れ切り、バスの中は静かだった。乳児を連れて駆け込んだバングラデシュ人女性が、「この車は神様のバス…」とつぶやき、5月にテレビ番組が放送されたことからこの名が広まった。
 「人の役に立てたと初めて感じた瞬間だった。恩返しが出来た」と清々しい笑顔で語った。

image_print

こちらの記事もどうぞ