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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年1月25日付け

 日本から戻ってきたばかりの人が「まだ時差ボケで…」とよく言うが、本当は「日本ボケ」にも同時に罹っている気がする。時差ボケは昼夜が逆になるために起きる身体の変調だが、文化がまったく異なる国での生活感覚や意識の切り替えが遅れる異文化ボケもある▼日本から戻ったばかりの数日間は、「頭の周りだけが日本の空気」という妙な感じがする。身体はブラジルにあるのに、「日本の生活感覚」というヘルメットを被って歩いているような違和感だ。言い方をかえれば、「日本の日本人」としての気分から、ブラジルで生活する「移民」としてのそれへと切り替えるのに手間取る「ボケ」か▼例えば日本では、しゃべることが細かいニュアンスまでよく理解できるし、お店でお釣りを誤魔化されることもなく、人が少ない夜道でも安心して歩けるなど、郷愁気分もあって〃緩い〃生活態度を自然にとっている▼ところが当地では、初対面の相手に対し、「騙そうとしているのでは」と疑ってかかる。いちいち店でもらうお釣りを計算し直したり、道を歩いていても薬中毒やトロンバのような不振なヤカラがこないか注意してみたり、相手のしゃべるポ語で意味がわからない単語があった時に聞き返すかどうか一瞬にして考えたりと、実に緊張感のある生活態度を自然に強いられる▼当地から日本に行く分には緊張が緩むだけだから問題は少ない。大変なのは当地に再適応する時だ。こっち生まれのデカセギが10年以上も日本に住んでから戻ると、やはり適応に困るという話も聞く。当地で生まれですらそうなるなら、日本生まれが「日本ボケ」するのは致し方なしか?!(深)

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