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南極で生態系の実地調査=二世の生物学者須田さん=「温暖化で氷が溶けている」

ニッケイ新聞 2012年2月21日付け

 サンパウロ州アチバイア市出身で、タウバテ市立大学で教鞭をとる生物学者、須田セシリア直美さん(48、二世)が昨年12月〜1月の約1カ月間、南極調査グループの一員として派遣され、南極大陸に生息する動植物の調査研究を行なった。12日、サンパウロ市のルーテル教会で報告会を開き、約20人が集まり熱心に耳を傾けた。

 ブラジル政府が南極条約を締結したのは75年で、82年に研究プログラムが組まれ最初の探検隊が送り込まれた。その後、南極観測基地「コマンダンテ・フェラス」が84年に開設された。
 須田さんの南極滞在は今回で2度目。USP出身で、リオ連邦大学のヨシエ・ヨネシゲ教授が率いる、様々な分野の研究者からなる南極環境調査グループ(INCTAPA)に所属。03年から約3年、京都大学でも研究した経験もある。
 今回の調査団は約50人。リオの海軍で1週間の研修を受けた後、空軍の飛行機でチリのプンタアレナスまで行き、船でドレーク海峡をわたり3、4時間で基地まで行く。基地があるのはサウスシェトランド諸島に位置する、キングジョージ島アドミラル湾だ。基地には海軍が常駐し、調査団を迎えるという。
 94年、基地をもつ国に環境の保護を義務付けるProtocolo de Madri(環境保護に関する南極条約議定書)が結ばれた。地球温暖化の影響で南極では少しずつ気温が上がり氷も溶けているといい、滞在する人間による大気汚染や下水流出が環境に与える影響などが調査されている。
 地球上の約80%の淡水量を貯蔵し、鉱物資源が豊富な南極。須田さんは来場者に、南極の位置関係や最高、最低気温、南極の生態系、各国の基地の位置や様子を、写真を見せながら説明した。
 須田さんが滞在したのは夏で、基地の付近の気温はマイナス5度〜5度。寒さと紫外線を防ぐために完全防着、登山家同行のもと外に出る。
 滞在中、数十匹の魚の解剖を行い、当地で研究するためにサンプルを凍らせて持ち帰ったという須田さん。血糖値、中性脂肪、塩分などを調べて、環境の変化が生物にどう影響を与えているかを調査するという。
 南極の魚として有名な「コオリウオ」はヘモグロビンを持たないのが特徴。南極の海は酸素の濃度が高く、代わりに血漿で酸素を運搬しエラからも吸収する。「海水が冷たすぎるので血が凍らないよう、特別なたんぱく質がある」と須田さん。強力なミトコンドリアを発達させてエネルギーを産生するなど「南極の生物は環境に適応した構造をもっている」と説明した。
 須田さんが滞在中、天候は曇りがちだったが、「晴れたときは自然が美しく、水面は鏡のようになる」。風速が高いときは外に出られないが、「その中でも飛んでいる鳥がいたのが印象深かった」と笑顔を見せていた。

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