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米国=シアトル大学で回顧シンポ=強制退去の違法性訴え=逆転勝訴したヒラバヤシさん

ニッケイ新聞 2012年3月9日付け

 【北米報知2月15日】シアトル出身の日系二世で、第2次世界大戦における強制退去の違法性を訴え米国政府相手に裁判を起こした故ゴードン・ヒラバヤシさん。当時は敗訴となり、懲役に服したが、戦後、裁判過程における重要な問題が発見されたことで再審され、1987年に国の違法性を認めさせた。
 逆転勝訴から25周年、先月2日に93歳で死去したヒラバヤシさんを讃えるシンポジウムが11日、シアトル大学法学部の主催で開催され、ヒラバヤシさんの2度の裁判が与えた影響について、代表者たちが教育、社会、法律、報道の観点から論じた。
 今のように日系人の収容所問題が一般に知られていなかった80年代。地元テレビKING5のローリ・マツカワさんは、一般視聴者に受ける話題性を求め報道室で議論になったと明かす。
 再審で結成された弁護団は、日系三世を中心に20歳代後半から30歳代半ばの若手弁護士。現代と違いEメールも携帯電話もない時代で、膨大な資料の調査に苦闘する様子をそれぞれが回顧した。
 団長を務めたロッド・カワカミさんは、「裁判に勝つためには法的な部分だけでなく、コミュニティーからの支援が必要不可欠でした」と語り、裁判費用、調査、ボランティアで日系社会からさまざまな協力を受けたことに謝意を表した。
 裁判に関しても、「(ヒラバヤシさんが)我々に語り続けてきたのは、『この裁判は日系人だけのためではなく、すべての米国人のためにある』ということでした」と振り返る。米国憲法の下に立ち上がったヒラバヤシさんの信念は現在、公民権の象徴として広く認知されている。
 当日は地元日系社会や法曹、大学関係者ら約300名が出席。家族関係者も招待され、息子のジェイさんが代表し、ヒラバヤシさんの生前について語った。基調演説は担当判事で、歴史的判決を下したメアリー・シュローダーさんが行った。
 シアトル大学法学部図書館では現在、ヒラバヤシさんに関する資料展示会を行っている。写真や強制退去に反対を表した手紙など、ヒラバヤシさんの人物や米国の公民権の象徴となった裁判の足跡をみることができる。
 また生前のインタビューは非営利団体「デンショー」のデジタル・アーカイブで見ることができる。
 日系人強制退去に結びついたフランクリン・ルーズベルト大統領の特別行政指令9066号発令から70周年。当時を振り返る「デイ・オブ・リメンブランス」の行事は今週末から来週にかけてもワ州議会、日系社会、ワシントン大学などで予定されている。(記事=佐々木志峰)

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