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デカセギに強まる一体感=「我々も日本社会の一部」=イシ教授3・11以降分析=被災地支援で連帯運動

ニッケイ新聞 2012年9月11日付け

 調査のために一時帰伯している武蔵大学社会学部のアンジェロ・イシ教授(45、三世)によれば、3・11以降、在日ブラジル人社会には定住化傾向を持つ人々の比重が高まり、「日本社会の一部」として自己認識する動きが強まっているという。「3・11以前は在日ブラジル人同志で助け合うのが普通であり、コムニダーデの中で関係が完結していた。しかし、被災地支援は日本人だろうが外国人だろうが助けるという形になり、腰を据えて日本社会でやっていきたいという意思表示になっていた」と見ている。在日伯人社会の質的変化の様子をイシ教授に聞いてみた。

 世界金融危機、3・11を経て在日ブラジル人が30万から20万人に激減し、定住志向の比率が上がるという質的変換が起きている中で、「ブラジルに帰りたいけど帰れない状況を抱えた人」と「日本に永住したい人」の二分化が進んだとイシ教授は分析する。
 前者の部分も厳然としてあるが、後者である定住化傾向の延長線においては「日本社会の一部」という自己認識が強まっていると見ている。そこから伯国的な気風を反映したソリダリエダーデ(連帯)運動という新しいうねりが生まれ、在京ブラジル大使館からの協力を受けて〃官民一体〃となって被災地支援を拡大させたという。
 金融危機以前は国外犯処罰裁判などの在日伯人の悪いイメージを増長する報道が多かったが、それ以降、派遣切りなどの好意的な報道が増えた。
 「でも3・11後の報道を見ていて、ブラジル人本人は同じ日本在住者として震災ボランティアをしているが、〃世界からの温かい支援〃に一まとめにされていた」と釘を刺す。「例えば愛知、静岡などのブラジル人集住地から沢山の救援物資が集められ被災地に運ばれた。日本マスコミはいまだに認識不足で、欧米やアジアから来た支援と同列に報じる傾向があった。入管法改正から20年以上が過ぎたが、まだ分かっていないと脱力感を感じた」と述懐した。
 そんな中で斉藤ワルテル俊男さん(11年10月5日付け本紙詳報)を扱ったNHKドキュメンタリー番組『家族を守れ〃神様のバス〃』は、「日本在住者」として扱われた数少ないもので「非常に評価している」という。
 イシ教授の11年度専門ゼミ生は在日外国人へのインタビュー集『3・11そのとき外国人は』を作成した。その中で、同番組プロデューサーの菅生(すごう)千草さんにインタビューした箇所では、「本当に、彼ら(在日外国人)の助け合い方って半端じゃないですよ。日本人の比じゃないっていうのをすごく感じます。『日本で生きていく上で地域コミュニティを崩しちゃいけない』っていうことを私たちは考えなきゃいけない」(90頁)とのコメントも掲載された。
 イシさんは7月に「外国人との共生社会」実現検討会議に招待され、中川正春(まさはる)内閣府特命担当大臣に加え関係各省庁代表者らを前に、公立学校でバイリンガル教育をする提案をした。共生社会を作るには次の世代に投資することが一番重要とし、「米国のマイアミなどではすでにその成功例がある。日本でも、地元日本人生徒とブラジル人が机を並べて勉強できるはず」と論じた。同教授は調査のために8月26日に帰伯し、9日に日本へ戻った。

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