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味わい深い作品続々と=第64回全伯短歌大会=互選1位は上田幸音さん=「病癒え歌詠むよろこび残されてしわ深き手にペンを持ちおり」

ニッケイ新聞 2012年9月22日付け

 1938年創刊の伝統ある椰子樹社(上妻博彦代表)とニッケイ新聞が共催する第64回全伯短歌大会が16日、聖市文協ビルのエスペランサ婦人会サロンで開催され、約40人と少な目だったが、遠くはバウルーの酒井祥造さんらも駆けつけ、短歌三昧の充実した一日を過ごした。今大会の最高作品を選ぶ互選票では上田幸音(ゆきね)さんの「病癒え歌詠むよろこび残されてしわ深き手にペンを持ちおり」が1位に輝いた。最高の作者を選ぶ総合点1位は青柳(あおやぎ)ますさんだった(21日付け特集で詳報済み)。

 当地歌壇を長年支えてきた清谷益次さん、柴尾小岱(しょうたい)さんら故人の冥福を祈ってまず黙祷を捧げ、司会者の多田邦治さんから初参加者の平間浩二さん、内谷美保さん、広川和子さんらが紹介された。
 梅崎嘉明さんは開会の挨拶で、「岩波菊治先生は『短歌は業である』と言われた。みなさんも何十回も参加され、先生と同じ業を抱えていると思われます。日本人は神武天皇の時代から短歌を詠み、当地にも持ち込んで64回も続けてきた。最後の一人になるまで続けましょう」と呼びかけた。
 金谷(かなたに)治美さんから成績発表が行われ、互選歌1位には上田さんの前出作品、2位は信太千恵子さんの「住む家を吾娘(あこ)の名義に切り替えて夜の静かな雨おとをきく」、3位は青柳ますさんの「結婚の指輪などなき時代にて信じ合いつつダイア婚来る」と発表された。
 総合1位は青柳さんで35点、2位は上田さんの27点、3位は青柳房治さんと崎山美知子さんが同点の24点だった。
 独楽吟競詠では石川啄木の歌を基にして作品が作られ、大戦末期のロシアとの激戦を詠み込んだ「迎え撃つ二百の戦車今日までの命と覚悟せし二十の心」という谷口範之(のりゆき)さんの作品が優勝した。谷口さんは「わずか一週間の戦闘で部隊が半減した。戦友の顔が今でも忘れられない。そんな思いを歌に込めた」と解説した。
 本紙が「五輪」との題を出した題詠では、木村衛(まもる)さんの「ブラジルに夢をもたらす五輪祭未来にはばたけ若き力よ」が1位になった。アベック吟では「旅をゆく車窓に露の晴れゆきて二人のしこりは解けゆくごとし」(上の句=小野寺郁子さん、下の句=安良田済さん)が1位に選ばれた。
 現在までに61回も出席した安良田さんは「今年97歳。この年で1位になった。みなさんも長生きして、私のように威張ってほしい」とユーモラスたっぷりに挨拶して会場を沸かせ、午後4時、穏やかな雰囲気のまま大会は閉幕した。
 阿部玲子さん(82、二世)に第1回の話を聞くと、「まだ19歳でした。両親が歌人で、亡くなった母の代わりにと請われて、スザノ短歌会に参加し始めた。あの頃は30代が中心で、凄く活気がありました。今まで歌をやってきて本当に良かったです」と振り返った。

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