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イビウナ庵便り=中村勉の時事随筆=1月14日付け=ポピュリズムのコスト

ニッケイ新聞 2013年1月16日付け

 民主主義というコインの裏側にはポピュリズム(感情によって態度を決める大衆を重視し、それに迎合しがちな政治姿勢)と書かれていると言う。ポピュリズムに汚染されている民主主義と、そうでない民主主義の2通りの民主主義があるわけではなく、ポピュリズムの様々な型があるだけだ。
 民主主義とはカネのかかる政治で、昔のローマ帝国でも選挙の票集めに、「パンとサーカス」で市民のご機嫌をとった、と伝え聞く。現金をばら撒く政治家は昔も今も絶えない。
 日本でも、自公は野党時代(ついこの間)には政権党(民主)をバラマキ呼ばわりしていたが、政権奪取後早速、バラマキに専念し始めている。違いは「デフレ脱却」を口実にしているところだけだ。是非「デフレ脱却」に成功し、日本経済を成長路線に乗せて貰いたいものだ。首尾悪く、バラマキのツケだけが残ったということにならないよう祈るばかりだ。
 南米は豊かな自然に恵まれている。アルゼンチンはエネルギーも食糧も自給でき、教育水準も高い、ヴェネズエラも石油はじめ地下資源の豊富な国だ。その他の南米諸国を見ても、恵まれていると思う。
 しかし、ブラジルとチリはまあまあだとしても、その他は、よくない。何故よい国になれないのだろうと、首を傾げたくなる程だ。いろいろな見方があるだろうが、一つ原因を挙げれば、ポピュリズムの弊害だろう。
 現在のヴェエズエラを見ると、チャベスという「むきだしの」ポピュリストがいる。石油を国有化し、その収入で貧困層の票を買収する。国民の半数を生活保護市民にし、現金支給する。ガソリンも只だからオンボロ車が走り回る。エネルギー節約など頭にない。希少性の制約がないから、夢のワンダーランドだ。それを実現したチャベス大統領は神に近い。最近の大統領選挙にも勝った。
 しかし、4回目のがん手術を受け、就任式に出られない。憲法上は副大統領が臨時大統領に就任して、大統領選挙の仕切り直しだが、チャベス信仰者はチャベス以外の大統領では承知しない。国を二分する大騒ぎになっている。もう一つの不思議な国アルゼンチンも、半世紀前のペロンという稀代のポピュリストの呪縛から解放されていない。ポピュリズムのコスト(費用)は極めて高い。
 希少性の制約を無視すると、人は節約しなくなる。夢のエネルギーなどと欺くと、節電・省エネ思想もなくなる理屈。トレード・オフ関係(一方を選択すれば他方を犠牲にせざるを得ないという状態のこと)にある公平と効率のどちらかを極端に押進めると、もう片方はゼロになる。天国(公平の極み)では誰も働かない。
 この世は、希少性の制約の中にあり、公平と効率のバランス・コントロールを必要とする。公平と効率は、ブレ—キとアクセルの関係にあり、両方を一度に踏むことはできないし、片方だけでも運転できない。
 ポピュリズムのコストは、錯覚の天国を夢みて、地に足を踏みしめて生きることを忘れた代償だと思えばよい。ポピュリストは遍在(どこにでもある)する故に、要注意だ。その為には、節約を心がけ、危険察知能力を磨き、アクセルとブレーキを踏み違えないことだ。二大政党交代制も一つの知恵だと思う。

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