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百年史刊行=6年がかりで全5巻4冊=「ブラジルの歴史の一部」=ボツや書き直しにお詫び

ニッケイ新聞 2013年4月30日

 日本語版ブラジル日本移民百年史編纂・刊行委員会が07年から進めてきた『ブラジル日本移民百年史』がこのほど完成し、『生活と文化編(2)』(第4巻)と最終巻『総論・社会史編』(第5巻)が合本されたものが刊行された。各100レアルで日系書店にて全5巻(4冊)が販売されている。
 昨年9月頃に編纂委員長を辞任した森幸一さんに代わり、醍醐麻沙夫さんが編纂委員長を引き受け、作業を開始したのは昨年の10月頃だという。
 その時『産業編』『農業編』の編纂はほぼ終った状態で、『生活と文化編(2)』の一部と『社会史編』の全部が醍醐さんの手に委ねられた。
 百周年記念協会執行委員長の松尾治さんは「最初から2013年3月に百周年協会は解散すると定款に定められていた。この3月までに急いでやらざるを得なかった」と説明する。
 それまで第3巻しか刊行されていなかったのに、昨年10月から今年3月までに残り4巻を印刷するという切迫した日程だった。
 醍醐さんは「本来なら作者に連絡を取って内容変更などを話し合うべきだったが、あまりに時間がなかった。その結果、連絡なしにボツにしたり勝手に書き直したりした部分があることは、お詫びしたい」と話した。
 その流れの中で、外山脩さんが執筆した勝ち負け抗争を中心とした戦後史原稿は、醍醐編纂委員長と「考え方が違う」とボツにされ、終戦後の邦人社会の混乱に関してはわずか15頁程度の記述となった。
 勝ち負けテロと臣道聯盟との因果関係に関し、関係ないとする外山さんと、従来通り「関係ある」とする醍醐さんの考え方の違いが真っ向から対立した形だ。
 醍醐さんは「百年史は70、80年史を踏まえ、そこに大きな路線変更を加えず、でも、さらに詳細に綴ることを基本的編集方針」とした。
 外山さんが批判する合本問題に関しても、「刊行済みの『農業史編』に社会史編に入ってもおかしくない内容が多く含まれており、それとの重複を避けた結果、第5巻が206頁と少なくなったため、やむを得ず合本にした」と説明。
 さらに松尾さんは全854頁もある分厚い最終刊を手に、「十分な資金がなく、印刷代を抑えるために合本にしたが、中味としては十分に2冊分以上のものがあるはず」と補足した。
 4巻は芸能、音楽、スポーツ、宗教、雑誌・刊行物史、5巻は通史、福祉史、交流史を扱う。同様に醍醐さんが実施した百周年記念事業によるサイト「ブラジル移民文庫」と5巻はリンクしており、百年史の内容をネット上で公開することも検討中だという。
 松尾さんは「儲けるために作ったわけではない」と原価割れの価格に抑え、300冊を発行した。「なんとか最後まで刊行され、百周年協会としての責任は果たした。今までで一番詳しい移民史になった」と安堵の表情を見せた。
 百周年協会理事長の上原幸啓さんは「この本はブラジルの歴史の立派な一部。日本移民の歴史が、このような立派な形で完成したのは、献身的に参加してくれた一世の執筆者を初め、寄付してくれた皆さん、協力者の方々のおかげ。感謝ばかりです」と述べた。
 問い合わせは同協会(11・3209・3875/マルタさん)まで。

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