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人騒がせな亜国大統領訪問=巴亜間の「歴史的贖罪」に=「無教養で横柄」と反発も=パラグァイ 坂本邦雄

アルゼンチンのクリスチーナ・キルチネル大統領(Foto: Presidência da Argentina)

アルゼンチンのクリスチーナ・キルチネル大統領(Foto: Presidência da Argentina)

 当初は7月の2、3の両日にかけてパラグァイを公式訪問する筈だったアルゼンチンのクリスティーナ大統領は、その直前になって急に咽喉頭炎の理由で同予定をキャンセルし、パラグァイ政府を混乱させた。その穴埋めにクリスティーナは今月の12日から13日にわたり改めて来パを約したが、過去フェルナンド・ルーゴ元大統領の時代にも幾度か約束をすっぽかし、待ちぼうけを食らわした例もある。そのため、パラグァイ当局はその時になって見ないとどうなるか疑わしいと案じていた。

 事実、12日の当日も予定時刻もハッキリ公表せず、クリスティーナ大統領は夜の20時30時頃に政府専用の「タンゴ1号機」でシルビオ・ペッチロッシ国際空港に到着した。
 公式随員は双国共同事業ジャシレタ水力発電所のオスカル・トーマス亜国側総裁、アクセル・キシリョフ経済相、フリオ・デ・ヴィド連邦企画相、エクトル・ティメルマン外相、アルフレド・エスコッシマーロ公報通信長官、及びエントレ・リオス州のセルヒオ・ウンバーリ知事、フォルモサ州のヒルド・インスフラン知事、フフイ州のエドゥアルド・フェルネル知事、サンチァゴ・デル・エステーロ州のクラウディア・デ・サモラ知事、それと複数の与野党国会議員、並びにミシオネス州のマウリセ・クロスとチャコ州のカルロス・バシレフ・イバノフ両知事は翌13日に駆け付けた。
 今回のクリスティーナ大統領のパラグァイ訪問の主な目的は、フランシスコ・ソラノ・ロペス元帥が当時ドイツに発注購入した高級家具一式がパラグァイへ船で送られて来た途上、折しも三国同盟戦争の勃発でアルゼンチンに没収され、エントレ・リオス州の博物館でこれまで保存されていたものを、今回クリスティーナ大統領が一国の高遠なる「歴史的贖罪」を象徴する両国不朽の友好親善の証として正式に返還する為であった。
 なお、クリスティーナ大統領にして見れば、内心余り触れたくないジャシレタ水力発電所の膨大な債務問題の解決、同発電所生産電力のパラグァイ側使用余剰分の公正な市場価格に依る売電条件、発電所の共同運営・平等管理等やパラナ‐パラグァイ河水路自由航行、アルゼンチン国経由の貿易に対する障害の恒久的排除、パ国ニェエンブク県に隣接するフォルモサ州での原子力発電所建設計画等々の問題を、パラグァイ側はむしろこの機会に直談判したい処であった。

ジャシレタ発電所問題にも恩着せがましく発言

 カルテス大統領との面会にロペス宮殿(大統領府)に20分遅刻しながら、随員を伴って到着したクリスティーナ大統領は、その挨拶の演説で先ず主に英雄ロペス元帥に所属した家具コレクションの亜国政府による返却は、取りも直さず巴-亜親善関係を確証する「歴史的正義」に他ならないとした。
 そして、ジャシレタ水力発電所に関わる色んな問題も、基本的にはアルゼンチンが在ってこその〃ジャシレタ〃であり、その工事も2003年に当事のキルチネル政権が完成した(註・技術的に未だ決して終わってはいないのだが)ものであると自画自賛し、パラグァイは亜国に感謝はしても決してジャシレタの件で余り文句が言えた筋合ではないと言い切った。
 これはブラジルがイタイプー水力発電所の共同事業について、パラグァイのメリットは単にパラナ河の水を半分提供したのに過ぎないと言う論法に似ている。
 なお、クリスティーナは双国共同事業ジャシレタ水力発電所に対するマスコミの毒舌的論調は、巴-亜両国政府の弱体化を図るもので、カルテス大統領にその対応に注意すべく、マスメディアの操縦術を宣(のたま)った。
 これ等クリスティーナの長広舌に対し、カルテス大統領はジャシレタやその他の問題にここでは一切触れず、唯ロペス元帥の家具コレクション返還の厚意に対し、単に深甚の謝意を述べるに止めた。
 元々寡黙で口重(ちおも)なパラグァイ人に比べて、遥かに饒舌なのはアルゼンチン人だが、一連のクリスティーナ大統領の今回の弁舌を聞いて治まらないのが国会の議員等である。

「我が大統領をバカにしたもの」と拒絶宣言

 中でも元愛国党員で現無所属のオルガ・フェレイラ・デ・ロペス下議員は、『私は常に反カルテス派である事に変りはないが、今度はクリスティーナ大統領の無教養で失礼な、且つ横柄な厚顔あつかましい話を聞いて憤慨した。かような不埒なクリスティーナの態度は、我が大統領をバカにしたにも程があり絶対に許せない。私はカルテス大統領とパラグァイ国民の名誉を大いに弁護し、クリスティーナ発言の拒絶宣言を可決すべく提議する』と議会に諮はかったが、改進党のカリーナ・ロドリゲス下議員に『単なる共感や反感の感情問題でかような提案を議決するのは危険だ。先ずは外交委員会の意見を徴すべきだ』と反対され、オルガ下議員は怒って席を蹴って退場した。

「煮ても焼いても食えないやっかいな婆さん」

 ジャシレタ水力発電所の建設には色んな不透明な問題があり、かつて亜国のカルロス・メネム元大統領(1989ー99)は同事業の腐敗振りに呆れて、ジャシレタは「汚職の金字塔」だと発言し、国際金融機関が一時融資をストップしたのは有名な話である。その尾は未だに続き、パラグァイは亜国側が不当に課す負債の計算方法に抗議しているのが一つの大きな問題なのである。
 最後になったが、お隣のウルグァイの「ペペ」ムヒカ大統領もクリスティーナには腹に据えかねるものがあるらしく、『亡夫の頑固でスガ眼のキルチネル爺さんよりも今の〃クロゴケグモ〃のラプラタ女王の方がもっと煮ても焼いても食えない厄介な婆さんだ』と評したのが、うっかりオフレコだと思ったマイクを通じて世界に洩れて国際問題になったのは今でも記憶に残る愉快な「ペペ語録」である。

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