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【アマゾン日本人移住85周年】アマゾニア援護協会=コロニアの健康支え半世紀=新病棟建設、記念誌編纂も=来年1月式典でお披露目

 アマゾン地域に移住した日本移民の健康を支えてきたアマゾニア日伯援護協会(八十島エジソン会長)は来年、創立50周年を迎える。記念誌編纂、第3病棟の建設も進む。世代交代も進み、ブラジル社会にも貢献しているが、日本語で対応できる日系医師を多く配置、コロニアに寄り添う医療をこれからも目指す。

地元ブラジル人の姿が目立つ病院内

地元ブラジル人の姿が目立つ病院内


 会員数は745人(13年時点)で、60%を日本国籍者が占める。職員数は、昨年アマゾニア病院の医療従事者を中心に職員数を53人増員して396人となった。
 現在の八十島会長の二代前から生田勇治氏(汎アマゾニア日伯協会会長)、その次の及川定一氏と、医師が会長に就任している。
 理事全員が現職で平均年齢49歳、理事会や議事録はポ語がメイン。仁和ウィルソン病院長はUNIMEDべレン医師組合会長、生田氏はパラー州医師会の副会長だ。
 援協が運営するアマゾニア病院内を見学してみるとそのほとんどが地元のブラジル人。しかし「各診療科に一人は日系の先生を配置しており、一世の高齢者に人気です」と太田勲事務局長。
 医師90人中35人が日系人、診療科は30科目、救急外来10床、一般病室61床、手術室4室を設置し、地元の病院としては中規模を誇る。
 「高齢者の介護はなるべく自宅で行うのが政府の方針」(太田さん)というなか、やはり要は医療事業だ。
 また最近は援協運営のコンベニオ「アマゾニアサウージ」が加入者8500人を数え、昨年度は総収入の46%を占める事業に成長した。現在は援協の100%子会社として法人化させ、移管を進めている。

50周年に向け準備進む

 来年1月31日、両国の関係者を招待して「創立50周年式典」を開く。そのほか日ポ両語の記念誌も発刊する。
 また、記念事業として現在神内良一病棟(第3病棟)の建設が昨年5月から進む。既に地下、1~3階部分が稼動中で、7階まで拡張予定だ。集中治療室(UTI)20床を含む144床、専門診療科32、医師150人を増員して大幅にキャパシティを拡大する。
 手術は1日10~15件、診察件数は400件。新病棟設立で、経営効率を高めたい考えだ。

アマゾニア援護協会のあゆみ

1965年1月26日、当時の汎アマゾニア日伯協会事務所の一室で実費診療所が開かれ、「アマゾニア日本人移民援護協会」として発足。日本移民を対象に日本語で診療を行い、アマゾン地域各地に巡回診療班の派遣を始めた。
72年、べレン市、パラー州に公益団体として認可され、74年に現在の「アマゾニア日伯援護協会」に名称変更。85年に国家福祉審議会に慈善団体として認可された翌年から福祉事業を開始した。 
閉鎖した学生寮を改修して86年に更正ホームを仮設し、アルコール依存症、精神障害者、生活困窮者等を受け入れた。
91年に近郊のアナニンデアウ市に厚生ホーム(養護老人ホーム)を設置。2人部屋の5室からスタートし、現在は20人収容となっている。
90年からは連邦政府公認の公益団体となり、べレン市内のアマゾニア病院、トメアスー十字路アマゾニア病院を運営する他、モンテアレグレ、サンタレン、アバエテトゥーバ、アカラなどの奥地巡回診療や高齢者への無料健康診断も行う。

援協一筋31年=太田勲事務局長(63、新潟)

太田勲事務局長

太田勲事務局長

 北伯雇用青年として1975年に飛行機で移住した若手戦後移民だ。トメアスーの組合に4年勤務し、サンタイザベルに移転した後、同地在住時に頚椎を骨折する大怪我を負い、アマゾニア病院に入院したのが出会いだった。「50日間入院して、リハビリのために日本に2年帰国した。戻ってきて援協に挨拶に行ったら働かないかと言われて」。そこから30年以上援協ひと筋。厚生ホーム長、総務部長などを経て、06年から現職。

合同句集『樹海』刊行=アマゾン移住85周年記念

「樹海」の表紙

「樹海」の表紙

 アマゾン地域への日本人移住85周年を記念した合同句集『樹海』(汎アマゾニア日伯協会発行、273頁)が、本紙べレン通信員の下小薗昭仁さんらが編集を手がけ、9月に刊行された。
 タイトル『樹海』の由来はパラー原産のカスターニャ・ド・パラーの大樹。樹齢85年のパラー栗の写真が表紙になっている。
 べレン俳句会、サンタイザベル俳句会、カスタニャール俳句会、トメアスー俳句会の合同句集で、先人遺稿集、会員の作品が収められている。責任編集はトメアスー俳句会が担った。
 編集委員の一人、三宅昭子さんは編集後記で「移住して早半世紀、この日本独特の短詩を愛することによりアマゾン生活の証のようなものを残せるならと考えている」と綴っている。
 購入希望者は、トメアスー俳句会の新井範明さん(91・9166・7105)まで。

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