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オーリャ!

 当地での生活が1年を迎えた先日、ふと、日本にいた頃はあれほど気になっていたはずの労働問題の話題を忘れていることに気付いた。
 かつては、いわゆる「ブラック企業」の長時間労働や残業代不払いに強い問題意識を持ち、過労死報道には身内ごとのように胸を痛め、日本の行く末を案じていた…。
 意識の中心が日本からブラジルへ移ってきたからなのだろうか。たった1年で大切だと思っていた事を忘れてしまった自分に、驚きと無責任さと寂しさを覚える。
 当地には年を経ても、日本に強い想いを抱き続けている人がいる。「移民にとって祖国は、そういうものだろう」と漠然と納得していたのだが、自分の心変わりを自覚した今、「そんなに簡単なものじゃないぞ」と思うようになった。どんな曲折を経てその境地に至ったのか―改めて訊きたくなった。(石)

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