ホーム | コラム | 樹海 | 大地震を通して見える人の心

大地震を通して見える人の心

 議会での駆け引きや汚職といった話にうんざりしていた時、思わず聞き耳を立てた話がある。4月25日に起きたネパールでの大地震後、友人らと現地に飛んだ医師のニュースだ▼サンパウロ市内の病院で働くルイス・ペレツ氏(30)は4月26日夜、友人の医師に電話をかける一方、ネパール再建のための募金と現地での活動への参加をフェイスブックで呼びかけた。27日にはオランダの友人から3千ユーロ以上の資金が集まっているから送金先を知らせろとのメッセージが入り、4月29日に計5人でブラジルを出発。5月6日にカトマンズに到着し、同市から30キロのチンブで医療活動を行った▼同医師らは先週帰国したが、到着後のインタビューで、焚き火の傍で休んでいた同医師に、せめてもの感謝の意味でか、「食べきれないほどの食べ物を盛った皿を差し出した現地人男性がいた」と語った。男性は医師達に食事を提供した後、子供達にも食事を与えたというが、あの状況で家族全員が満足出来る量などありえない。次はいつ食べ物が手に入るかわからない中、医師達に食べ物を差し出した行為に胸を熱くした同医師の姿と、彼らの活動に関する報道は、正に一服の清涼剤だった▼大きな団体に属さず、同種のプロジェクトに参加する事が昔から夢だったという同医師は、サンパウロ市での勤務を差し置いてフェルナンド・ノローニャ島の救急医として勤務した事もある。モンスーンの時期になれば土砂崩れや感染症の危険が高くなるから、来月は再び現地に向かうとも。今度はどんな陣容で旅立つのか知らないが、13日の時点の再建募金は最低目標の2万8千レを超え、5万レ以上に達している。(み)

image_print