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苦学生が拾った金を返却=前日失職の母は喜びの涙

 連邦直轄区サマンバイアで、午前中は勉強し、午後は働く苦学生が、1600レアルの入った財布を拾ったが、持ち主を探して返して話題になっている。
 話題の主はルーカス・ユリさん(16)で、11日に学校に向かう道で財布を拾った。授業中も落ち着かないユリさんを見た教師は、事情を聞いて、持ち主を探して返すよう薦めた。
 その日の内に、財布は既に退職した大工のものと判明。具合が悪くなった妻を医者に連れて行こうと慌てていて、うっかりしてゴミ箱に捨ててしまったという。
 ユリさんの母親のシンチア・マルケス・ダ・シウヴァさんは、ユリさんが財布を拾った前日に解雇されたばかりだったが、息子が良心に従って正しい事をしたと知り、誇らしく思うと共に、その話を思い出すたびに喜びの涙を流している。
 若くしてユリさんを生んだシンチアさんは、ユリさんの父親に当たる男性との間に女児ももうけたが、結局別れ、シングルマザーとして2人を育てた。
 子供に食べさせるために自分は食べずに過ごした事が何度もあったと言うシンチアさんは、昨年から働き始めたユリさんが、朝早く家を出なければならないのに文句一つ言わず、今回も正直さを実証した事などを、心から誇らしく思っている。
 他方、財布を返した事で、学友達から「バカな奴だな」と言われたりしたユリさんは、失くした人が困っているに違いないと考えたり、正直に返したりする事が批判されたり、ことさらに取り沙汰される事に、悲しさも覚えたという。「僕がした事は当たり前の事のはずなのに、それが話題になるなんて」というユリさんが、友人に「バカな奴」と言われて心を痛めた時、慰め、元気付けたのはシンチアさんだ。
 「友達になじられた後、『自分がお金を返した事で母さんはがっかりした?』と訊いてきた時の顔が一日中頭に焼き付いて、胸が痛んだわ。だから、携帯電話に『あなたの事を誇らしく思っているわ』ってメッセージを送ってあげたの」というシンチアさん。そのメッセージには『あなたが正直にお金を返した事で、私の子育てが間違ってなかった事もわかったわ。本当にありがとう』とも書かれていた。
 ユリさんは最初、友人とふざけあって財布を投げあっていたが、友人が上に投げ上げた時、現金が入っているのが見えたという。友人は財布を掴み、「俺の金だ」と言って走り始めたが、ユリさんは友人と話し合い、財布を返してもらった。
 財布の持ち主探しは学校の教師も手伝ったが、財布が持ち主の手に戻ったのは、ユリさんが拾ってから10時間も経ってからだった。
 ベニシオ・エレウテリオさん(66)によれば、年金がそっくり入った財布がないのに気づいたのはブラジリアの大学病院に着いてから。薬や車の燃料の購入、種々の支払いもできないと青ざめたが、気を取り直して学校にも尋ねてみたら財布が見つかり、「世の中にはまだいい人がいるんだってわかって本当に感動した」ともいう。
 学校で財布を受け取ったエレウテリオさんは、ユリさんが友人の孫である事も知り、友人にも連絡。祖父のアレッシャンドレ・ダ・シウヴァさんが孫の行為に感動した事は言うまでもない。
 一部始終を見守った教師のリヴァニア・デ・アラウジョさんによれば、ユリさんのような状況に置かれたらお金を返すかと聞いたところ、持ち主を探して返却すると応えた生徒は一握りしかいなかったという。ユリさんが「所有者が見つかっても見つからなくても、あのお金は自分のものではないから、使う事はできない」と言うのを聞いたアラウジョさんは、「ユリさんのような生徒がこの学校にも沢山いると信じたいわ」と語っている。(19日付G1サイトより)

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