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「平和をつくる者は幸い」

 フランシスコ法王の米国訪問は、27日開催のフィラデルフィアでのミサで終わった。飛行機に乗り込む直前の別れの挨拶では、9・11を記念したグランド・ゼロ訪問が最も感情をゆすぶったと語ったという▼米国の前にキューバを訪れた際のミサの中では、コロンビア政府と同国革命軍に和解を呼びかけたため、双方の間の和平合意が大きく進展した。それに、米国とキューバの国交回復も、その立役者はフランシスコ法王だったとされている▼法王専用車は防弾ガラスのないものにさせ、子供を抱くために専用車を降りて警備員を慌てさせた話は有名だ。復活祭の直前の「洗足の木曜日」には刑務所収監者達の足を洗ってキスをする、メガネを作り直す必要があるといってローマの眼鏡屋に突然現れるなど、カトリック教会と一般社会の間の距離を縮める行動も多々聞こえてくる▼米国では国連の集会で環境問題や経済の動向、難民問題などについても話し、見聞の広さやバランス感覚も示した。米国訪問中に語った言葉が対立する姿勢を強めてきた政治の世界を変え、人類をより一体化させると期待する声も高いのを見ると、改めて「平和をつくる者は幸いです」という言葉を思い出す▼南米コロンビアでの抗争やシリアの内戦で生じた難民問題などを指し、「世界は第3次世界大戦の様相を示している」と案じる法王。彼が法王名に選び、「神よ、私をあなたの平和の道具としてください」との祈りで知られるアシジの聖フランシスコの如く、誰もが愛や赦し、信仰、希望などを与える事や、人を慰め、理解する事や愛する事を求め続ければ、世界はきっと変わるとの希望を新たにさせられた。(み)

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