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年頭のご挨拶=「明るく生きる」=ブラジル日本商工会議所会頭 村田俊典

村田会頭

村田会頭

 新年明けましておめでとうございます。2016年が皆様にとって良い年でありますようお祈り申し上げます。また商工会議所の会頭として今年も頑張ってゆきたいと思います。皆様のご支援をよろしくお願いします。
 ニッケイ新聞のルーツは戦後1947年にさかのぼり、まさしく日系コロニアと共に歩んでこられました。朝起きて、昼食後のカフェを飲みながら、また夜就寝前のひと時、日本語で日本とつながるという貴重な時間を、数え切れない程の日系移民、日系人の方々に提供されてきた日本語新聞社の貢献なくしては、ブラジル日系社会の発展や連帯は生まれなかったでしょう。これまでのご努力に敬意を表したいと思います。
 激動の2015年が終わり、厳しい2016年の幕が開けました。新年を迎えるにあたり、表題の「明るく生きる」について考えてみます。
 20年前、私が5年間のブラジル勤務を終えて日本に帰国して程なくした頃、銀行で人事面接がありました。面接官は人事部のお偉いさん。質問は、「ブラジルのインフレはどうして終息したの?」でした。
 15分の面接で十分に説明できるとも思えず、多少冒険にでた私は「心理学的現象だと思います」と答えました。面接官は少し怒った様に「財政赤字とか経済学的な回答は出来んのか」と詰め寄ってきて、私はどうやって反論したのかも忘れてしまうほど、散々な面接でした。後で支店長からは、「そう落ち込むな、人生が終わったわけでもない」と慰めて貰いましたし、副支店長からは、「ここからが勝負、人生苦しい時に真価が問われる」と励ましてもらいました。
 私はその後、何度もその面接のシーンを思い出しては、「心理学的現象」と言い切った私が間違っていなかったと確信しています。もちろん、もっと上手に説明する方法はあったと思いますが。
 さて、2億人の人口を抱えるブラジルは、良くも悪くも心理的影響を受けやすい人種だと感じます。1994年のレアルプランも、それ以前の経済政策も少なからず国民の心理的行動が成功と失敗の鍵を握っていました。
 まさに、2014年10月の大統領選挙後のブラジルもその様相を呈しています。政治に対する不信感が企業家の心理をネガティブにし、その結果経済が落ち込む、税収が減る、財政赤字が悪化する。このスパイラルに入っています。財政赤字の数字だけを取り出して政府を非難すべきではないでしょう。
 私は、国民全員が「前向きに明るく生きる」事が出来たら、あっという間にこの危機は解決すると信じています。そして、それが今の状況では一番困難なことも理解しています。
 しかし、大きな括りで考えず、自分の家族、会社の課、など小さな単位から「明るく生きる」事を心がければ、いつかは必ず良い日が訪れると思います。ブラジルが消えてなくなるわけもありません。正に、ここからが真価を問われる大切な一年になると思います。

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