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四世ビザに「条件付き賛成」?=本人や関係者に意見聞く=(12)=バイリンガル教育の難しさ

 日本では言葉の問題で公教育の授業に遅れをとる外国人児童には、在籍学級の授業以外に特別指導する「取り出し授業」、授業中に指導をする「入り込み授業」が行われることが多い。その場合、指導を担当するのはほとんどの場合が二言語話者だ。
 中川さんは「しかし、ほとんどの担当者はそこそこ外国語、日本語ができる人。教員免許所有者は少数で、中には義務教育未終了者が担当になる場合も」と明かし、「日本人の子どもだったら教員免許所有者になるのに」と残念そう。
 発達障害、自閉症と診断されるブラジル人子弟も近年増加しているのも気がかりな点だ。日本人児童の自閉症発症率は全体の1%以上なのに対し、ブラジル人児童の場合はなんと6%以上。
 「物覚えの悪い子どもにどんなサポートが足りていないのか、ではなく子どもに問題があるから仕方ない、と判断するケースが多い。教育関係、家庭、保護者の労働環境など、色々把握した上で子どもを診断するべき」との意見だ。
 中川さんが昨年小学1年生の担当教員と話した際、「外国語しか話さない外国人生徒でも、1年生で編入すれば半年で授業に問題なくついていけるようになり、1年も経てばむしろ外国語の方を忘れてしまう」という話を聞いたそうだ。それはそれで「果たして良いことかどうか?」との疑問を持っている。
 多くのブラジル人子弟は論理的思考能力が必要になる4学年に上がると、他の生徒との学力差が開き始めるそう。「もともと1年生になる前から差があり、それが徐々に大きくなっていくだけ。もともと日本語だけで考える子と、2つの言葉を使い分ける子の差は大きい」と説明した。
 まずは一つ目の言葉で論理的な思考能力を育てないと、もう一つの言葉ではさらに難しい。バイリンガル教育の難しい点だ。「結果的に『問題のある子』になってしまう」と残念そうに語った。
 中川さんは幼児教育に課題があると判断し、昨年は3歳児の保護者を対象に、日本各地で講演会や育児指導などを行った。子どもの保護者である参加者のほとんどが、実は20~30年前に両親と一緒に訪日し、日ポ両語に問題を抱えている世代だ。日本で育ちながらも、日本語でもポ語でも義務教育を終えていない人も多い。
 講演会では3歳程度の子どもに与える刺激や食事、睡眠、運動、おもちゃの作り方など説明した。可能であれば講演の前後に個人面談も入れる。「以前より貧しくなっている気がする。保護者に育児の知識がないんです」との印象だ。
 幼少期に自閉症と診断された子どもは、日本の幼稚園でもブラジル人コミュニティーでも受け入れられず、保護者が一日中家で育児をするケースが多いという。
 四世ビザが始まることで、この傾向が拡大するのなら大きな問題だ。(つづく、國分雪月記者)

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