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レジストロ本願寺落慶60周年=「先駆者の撒いた種は大木に」=高齢化受けエレベーター新設=さらに新棟建設計画も

本堂を背景に記念写真

本堂を背景に記念写真

 レジストロ本派本願寺(高橋一心開教師)と同地日伯文化協会(福澤一興会長)の共催で、『レジストロ本派本願寺60周年記念式典』が7月29日午後2時から同寺で開催された。サンパウロ市やパラナ州都クリチバの門信徒や、聖南西文化体育連盟傘下の各団体代表者らおよそ200人が駆けつけ、盛大に還暦の節目を祝った。

 地元のリベイラ涼風太鼓による和太鼓の音色が響き渡るなか、寺を運営する同寺護持会員や浄土真宗本派本願寺の杣山哲英南米教団総長、高橋開教師、稚児らが続々と門をくぐり入場すると、式典は始まりを告げた。
 本堂に場所を移し、杣山総長による読経が行われるなか参列者は焼香し、しめやかに法要が執り行われた。
 杣山総長は法話で「盆踊り」を題材に、その由来となった神通力第一と呼ばれる目連尊者の逸話を紹介した。「釈迦の教えは、人の姿を通して、自分の姿を見つめ直しなさいということだったのではないか」と語り、「色々な人の苦労を受継いで今日を迎えている。お寺が繁栄するよう努力することが、先輩方へのお礼になる」と説いた。
 挨拶に立ったリベイラ河沿岸日系団体連合会(FENIVAL)の山村敏明会長は、「素晴らしい式典を迎え心から喜び感激している。こうしてめでたい日を迎えられたのも、歴代主管開教師先生や門信徒の皆様の物心両面で支援頂いたお陰」と感謝を滲ませた。
 さらに寺の歴史を振り返り、「先駆者の撒かれた種は大木となって現在も成長している」と締めくくった。同寺護持会の黒澤森男会長も、「これからも浄土真宗のみ教えを良く守っていきたい。このことがお寺の発展につながり、各々の家庭を平穏にしてくれると確信している」と寺の更なる発展に向けて誓いを新たにした。
 ジウソン・ワグネル・ファンチン市長は「寺はレジストロの歴史の一部」と先駆者の功績を称え、「我が町が観光地として発展するよう努力しているが、その重要な観光資源が日本文化だ」と称賛した。
 サンパウロ州の観光都市20市に選出されることが見込まれており、「助成金が下りれば、インフラ整備や日系社会のイベントを援助してゆくことも可能になる」との吉報を伝えた。
 飯星ワルテル連邦下議、ルイス・マルセロ・コメロン市議会議長からも祝辞が送られ、同寺の発展に貢献してきた功労者10人が表彰された。
 式典後、落慶60周年記念プレートの除幕式が行われ、門信徒の高齢化を受けて新設されたエレベーターが披露された。現在の本堂建立以前に旧寺院として使用されていた敷地内の住宅を建替えし、今後2年で宗教文化活動を目的とした「新棟建設計画」が発表されると、門信徒らは歓喜に沸いた。
 その後の夕食会では、同寺婦人部お手製の豪勢な料理に舌鼓し、歓談を楽しんだ。サンパウロ市から訪れた婦人らは「まるで藝術。プロの料理人がつくったようで、素晴らしい。温かい心のこもったおもてなしに胸が熱くなりました」と思わず吐息が漏れるほどだった。
 午後6時からは『第57回盆踊り』を同寺内で開催。昨年までリベイラ河横の広場で開催されていたが、今年は60周年を祝して寺に場所を移した。FENIVALの婦人会らによる出店で賑わいをみせ、特設された櫓を囲んで来場者は夜が更けるまで盆踊りを愉しんだ。

涙ぐましい本堂建設の歴史=現地日系社会の心の拠り所に

 レジストロ本願寺は、1925年に深町信一や小野一ら数人の同宗信徒が集まり、法縁をしたことに遡るという。植民地開設当時で、そこには寺もなければ神社もない。そんな時代に、セッテ・バーラスに入植した生駒真澄師を迎え、心の拠り所として30年頃に発足したのが、護持会の前身にあたる「慈光会」だった。
 太平洋戦争勃発による活動休止を経て、46年に活動を再開。57年に初代の佐々木信澄開教師が赴任し、篤志家である管野勝雄さんからの土地の寄贈を受け、現在住宅となっている場所が寺院として使われ始めたことで、本願寺として歩みを始めた。
 その後、67年に篤志家の寺島武夫さんから土地の寄贈を受け、三代主管の藤森浄水開教師が中心となり、建設委員会が結成された。門信徒を中心にレジストロ日系社会から8万1107クルゼーロス(当時)もの寄付金が集まり、10年以上に渡る涙ぐましい募金活動によって、79年に現在の本堂が完成した。
 これまで13人の開教師が赴任し、現在に至る。

 

門信徒の寄付でエレベーター=節目の年を迎え思い新たに

高齢化を受けて新設されたエレベーター

高齢化を受けて新設されたエレベーター

 土地を寄贈した菅野勝雄さんの娘テレジーニャさん(三世、76)は、「『死んだら財産は持っていけない。人様のためになるなら』と父が言っていたのを思い出すわ」と懐かしむ。
 婦人会会長を15年務めた鷲見ルリアさん(二世、82)も、本堂を見上げながら「門信徒の一家の主を中心に、皆がかなりの額を出し合って作ったのよ」と感慨深げに語った。
 くわえて「新設されたエレベーターも皆の寄付を集めてできた。最近ではお寺に来るのも年寄りばかりだから、本当に助かるわ」と喜び、日系社会の紐帯の強さを伺わせた。「今では少なくなったけど、昔はお祝い事も多くて、子供たちは皆ここで結婚式を上げたものよ。私もここで金婚式を挙げて、200人くらい集ってくれたわ」と懐かしんだ。
 現在、同寺では月に2、3回の法事と「ケルメッセ」や「慈善お茶会」などの行事を催しているという。
 山村純子婦人会会長は、「09年に着任された高橋開教師は、若いけれどはっきり物事をお話されて、素晴らしい法話で皆喜んでいるわ」と語る。
 昨年には、高橋開教師の働きかけで、レジストロでは第3回目の開催となる「南米本願寺婦人大会」も開催された。山村婦人会会長は、「料理から何まで、皆で色々と助けあって開催できて、本当に良かった。年寄りばかりだけど、先生のお陰で張り合いが出てきました。これからもみ教えをよく守っていきたいわ」と節目の年を迎え、思いを新たにした。

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